土佐和紙に水彩絵の具で描く高知県越知町出身の洋画家・野並允温(のなみのぶはる)さんの個展が、いの町で開かれています。野並さんは、9日で御年87歳。数え年で米寿を祝う県内での最後の個展には、ふるさと高知への「愛」が詰まっていました。
迫力のある油彩画に、温かい雰囲気を醸し出す水彩画。越知町出身の画家・野並允温さんの作品です。

(野並允温さん)
「40歳の時に、(勤務していた)会社宛てに手紙を書きまして…これから絵描きの勉強をしますから、休日出勤や残業はさせないでください。必ず『あの絵描きはうちの会社で働いてたんや』と言われるような画家になりますという決意表明をして、絵の勉強に週4回ぐらい通いました。それでようやく画家になりました」
あれからおよそ50年。野並さんは今年、数え年の88歳=米寿(べいじゅ)を迎え、これまでを振り返る記念の個展を、いの町紙の博物館で開いています。会場にはふるさと高知をはじめ、四国の風景を描いた作品を中心に、68点が展示されています。
(野並允温さん)
「懐かしいなあというふうに思ってもらいたい。僕の絵は細密画で、しかも明るく、本当に見ているような絵になっていますので、皆さん、『癒やしになる』と喜んでもらえます。それがとっても嬉しいです」
野並さんの作品の多くは、厚手の土佐和紙に、水彩絵の具を何度も重ね塗りして描かれていて、深みのある作品となっています。

(藤崎アナウンサー)
「こちらは野並さんのふるさとの越知町のあの神社ですね」
(野並さん)
「神社は聖神社と言うんですがとても道が険しい。私は神社のところには上がってないが反対側の、そこも坂がきついので木に股を挟んでスケッチをした。とても(坂)が厳しいところです」
(藤崎アナウンサー)
「緑ひとつとっても色々な種類の緑がありますね」
(野並さん)
「山の木1本1本に愛情を込めて、未来に残していきたいという気持ちで描いています」
(藤崎アナウンサー)
「大きな作品ですから…この場所に居て私がみているかのような気分になります」

(藤崎アナウンサー)
「こちらは可愛らしい花が色鮮やかに咲いていてとっても素敵な景色ですね。こちらは場所が佐川町?」
(野並さん)
「はい、佐川町ですね。車で走ってたら『わぁ~赤いすごいなぁきれいだなぁ』というふうに思って。迂回して下に降りていってスケッチして写真を撮って家で描きあげた」
(藤崎アナウンサー)
「これは土佐和紙?」
(野並さん)
「はい、普通の画用紙で水彩画を描くと重ね塗りした時に先に塗った色が出てくる。そうすると絵が濁る。和紙だと立てに染み込んでいくので先に塗った色が起きてこない、そういう特徴がある。重ねて重ねてどんどん深い色ができていく。すっかりほれ込み、土佐和紙に描き始めて25年になります」

(藤崎アナウンサー)
「こちらはまたガラリと雰囲気の違った絵ですね」
(野並さん)
「ネパールに13回行っているのでたくさん友人がいるんですけど、その1人にサルベンドラ・パッチャイ(日本語で“お野菜”らしい…)というのがおりまして、彼から『弟と2人で合同結婚するから』と連絡が来たので『へんしも(すぐに)行かないかん!』と参加してきた。今までの作品と違ってキャンバスに油彩で描いている。下の方を見てもらったらわかるがでこぼこしている。実際に土がでこぼこしていた。石だらけの庭だったのでそのままそれを絵に」
(野並さん)
「ネパールの結婚式では花嫁さんは召使いと2人だけで来る。家族や友人も参加しない。花びらをかけるのは『うちの家風に染まりなさい』ということ。ものすごくカラフルに美しく見えるけれども内容としては厳しいものがあるようです」
大阪にアトリエがある野並さん。これまで30年にわたりふるさと高知で個展を開いてきたほか、月に1回教室も開いてきましたが、米寿を機に県内での個展は今回が最後となります。しかし、筆を置くわけではありません。まだまだ走り続けたいと、笑顔で語ってくれました。
(野並允温さん)
「『死ぬまで青春、生涯学習』という気持ちで、絵は歩けなくなっても描き続けたい。期待を裏切らないように頑張ろうと思います。精進いたします。ありがとうございました」