ドライバーの残業時間が年間960時間に規制される2024年物流問題。残業時間を左右するのが、荷待ち時間だ。ドライバーの荷待ち時間を1時間以上削減するというサービスが物流業界で急速に広がっている。

ドライバーの2人に1人以上が利用。スマホで搬入・搬出の予約受付完了

神奈川県にある富士フイルムロジスティックスの流通センターには、11か所のバースと呼ばれる荷物の積み下ろし場があり、1日50台以上のトラックが出入りしている。この流通センターにこのほど初めて導入されたのが、ムーボ・バースと呼ばれるトラック予約受付サービスだ。1階の倉庫に用意された3台のタブレットはドライバーのスマートフォンと繋がっており、搬出・搬入の日時予約、積み下ろし場への到着時間を登録することができる。トラックが流通センターの敷地内にある待機場に到着すると、ドライバーは車内から流通センターへの入場登録を済ませ、その情報は瞬時に流通センターのタブレットに共有される。

予約受付サービスが導入される前はドライバーが受付まで行き、受付用紙に記入。搬出の準備ができるまで、待機場に停めたトラックの車内で順番待ちをしていた。トラックの積荷の準備ができると、担当の荷役作業者が離れた待機場まで1日に何度もトラックを呼びに行っていた。それが今では、事前にその日に入庫するトラックのスケジュールが分かるため、事前に搬出の準備を済ませることができ、ドライバーの呼び出しや指示も手元のタブレットでできるようになった。ドライバーの荷待ち時間も削減することができるようになった。

富士フィルムロジスティックス 山内翔氏:
現場で今何が行われているのかをしっかり可視化して、データ分析して改善に繋げて、働いている皆さんの環境改善に繋がればと思っています。

ムーボ・バースを開発したのが2015年創業のHacobuだ。佐々木太郎CEOに創業の理由を聞いた。

Hacobu 佐々木太郎CEO:
企業間物流の現場を見るきっかけがあり、非常にアナログで非効率であるのを見て、すごく大きな重要なインフラのテクノロジーをアップデートしたいと思ったのがきっかけです。

国土交通省によると、2021年時点でのドライバーの荷待ち時間は平均1時間34分だ。「ムーボ・バースの導入により、荷待ち時間を平均63分削減することに成功している」(Hacobu 戸井田裕貴CTO)という。

2022年1月、ムーボ・バースを導入した日本出版販売の王子流通センターでは、仕入れた出版物を仕分けして、全国の書店やコンビニに配送するため、1日当たりの入出庫するトラックは300台を超える。導入前は流通センター内の駐車場は一杯になり、近隣の道路に入場待ちのトラックがあふれ、問題になっていたという。1台当たり平均70分ほどの待機時間があったが、導入後はほとんどの車両で大幅に減って15分以内になった。

日本出版販売 石津理羽氏:
近隣の住民の方の迷惑になってしまうということもあったので、ムーボ・バースを導入することによって、混雑を緩和できたことは大きな効果だと思っています。ドライバーからも待機時間が減ったことによって、拘束時間が減ったということでメリットを感じていただいている。

――ムーボ・バースには46万人のドライバーが登録している。

Hacobu 佐々木太郎CEO:
今、統計上日本で80万人のドライバーさんがいると出ているのですが、そのうちの46万人の方です。

――どんな会社が導入しているのか。

Hacobu 佐々木太郎CEO:
例えば食品流通の世界で言えばイオンさんの拠点。在庫型のセンターには全て入っています。セブン&アイさんの(荷物を)受けている拠点の方々にもかなり広がってきています。