先日の台風7号では、岡山県北で記録的な大雨を観測しました。そんな中、いま豪雨に備えようと、全国で水田に水をためこむ「田んぼダム」の普及が進められています。
西日本豪雨の教訓を活かそうと倉敷市でも導入が進んでいる「田んぼダム」。どんな仕組みなのか、現地を取材しました。
水田が広がる、岡山県倉敷市の早高地区。この地区では、大雨の際に水田に一時的に水をためる「田んぼダム」の導入が進められています。
(農家 佐藤正則さん)「この、穴があいている堰板を差すことによって、大雨の時に降った雨水が、一気に用水に流れるのを制御しています」
2019年、実証実験に参加して以来、所有する水田で「田んぼダム」を導入している佐藤正則さんです。導入のきっかけは5年前の西日本豪雨で、農地が冠水する被害を受けたことでした。
(早高地区の農家佐藤正則さん)「我が家のハウスなんですけど、浸かってしまいました。小松菜を作っていたんですが、『何か被害が軽減できる方法があるんかな』というようなことを考えていた時に、市のほうから提案をいただいて」
「田んぼダム」の仕組みは、水田から用水路につながる排水桝に、穴のあいた板を差込むことで、一気に水が流れ出すのを防ぐものです。
水害が激甚化するなか、農林水産省が手引きをつくるなど、全国的に導入が進められていて、倉敷市が行った実証実験でも、西日本豪雨規模の雨量で水田からの排水量を5割~6割程度まで抑制する効果が確認されています。
(倉敷市早高地区農業土木委員 大村孝志さん)「小さいことでもその積み重ねによって地域が安全になるという考えに立てば、地域の田んぼを有効に活用することによって防災につなげるのは非常に価値のあることだと」
「田んぼダム」は、昨年度は全国で約7万4千ヘクタールの水田に導入されていて、倉敷市では今年度37.3ヘクタールの水田で取り組みが実施されるといいます。
年々、豪雨の被害が身近なものとなるなか、低コストで効果が期待できることから、倉敷市も啓発と普及に意欲を見せています。
(倉敷市農林水産部耕地水路課 高橋萌さん)「みなさんで取り組んでいただくことによって、より効果の出る取り組みだと思います。倉敷市全体で取り組みができるよう普及啓発をしていきたいと思っています」
水田を活用することで激甚化する災害に備える「田んぼダム」。身近な田んぼの新たな活用方法に注目が集まっています。