7月末から8月はじめにかけて沖縄県内を襲った台風6号は、停電や断水を引き起こしたインフラだけでなく農作物にも大きな被害をもたらしました。
今が旬のフルーツ、マンゴーもその中の一つ。廃棄されたり安値で売られてしまうのを防ごうと“マンゴーレスキュープロジェクト”を立ち上げた、ある組合の取り組みを紹介します。

農家×IT=デジタルはるさー 農家を助ける新しい組合の形

「コーヒー豆の木も倒れていますよね」

名護市の果樹農家の松田さん。防風林に囲まれた場所にも関わらず、今回襲った台風6号で果樹が倒れる被害にあいました。マンゴーを栽培していたビニールハウスにも被害が。

果樹農家 松田駿さん
「上のビニールが真ん中から破れてしまってるので来年も使えないので買い替えになりますね」

県によりますと、北部地区のマンゴーなどの果樹214ヘクタールが台風の被害にあいました。

台風で傷がついた農作物はどうしても値段が下がってしまい、マンゴーの場合、通常はキロ当たり数千円で取引されていますが、被害にあうと買いたたきにあい、数百円まで下がってしまいます。

こうした農家の損失を少しでも軽減しようと活動しているグループがあります。ことし2月に結成された『デジタルはるさー共同組合』。通称『デジはる』です。

今回被害にあった松田さんのもとに、彼が参加している『デジタルはるさー協同組合』のメンバーがやってきました。2人ともフルーツを栽培する農家です。

デジタルはるさー共同組合 山城秀平理事
「パイプもぐにゃぐにゃになってるね、すごい被害だなと思う。直すのも結構大変」
デジタルはるさー共同組合 新垣裕一代表
「人手いりますよね、直すのも。組合のみんなで一気にお手伝いして解消できるようにしていきたい」

新垣さんが代表を務める“デジはる”は、もともとICTの推進で農家の所得向上を目指す集まり。組合の会員は50人。農家を中心に食品を扱う業種など多方面にわたります。

代表の新垣さんは大学の農学部を卒業後、JAやIT企業に就職。それらの経験を活かし『デジはる』では、農業にICTといったデジタル技術を活用するための支援を行っています。また組合員同士のオンラインでの交流も盛んで新商品の開発にも取り組んでいます。

果樹農家 松田駿さん
「通信販売のやり方を教えてもらったり、農家も販路を増やすことをやりたかった。デジタルを使うことでいろんな方とつながりも持てる、農家はこれからはやったほうがいい」

『デジはる』では今回の台風でも、インターネットを活用した農家支援を行いました。それが“マンゴーレスキュープロジェクト”です。

北部地区のマンゴー出荷時期と重なり、大きな被害があらかじめ予想された今回の台風。『デジはる』は、台風の被害が出る前に早めに摘み取ったり、収穫しても発送ができず品質が低下することが予想されたマンゴーをいち早く買い取り、冷凍保存。

できるだけ農家を支援したいと、現在の市場価格のおよそ4倍の値段で買い取っています。

台風の通過直後にそうした「訳あり」のマンゴーを販売する通販サイトを素早く開設し、瞬く間に400キロを完売。さらに県外の食品会社に2トンも販売しました。

台風被害をうけた農作物はどうして買いたたきにあいがちですが、新垣さんはできるだけ高く買い取っています。

かんな農園 漢那宗貴さん
「台風で1週間も出せない、県外にも出せない、県内にも流通が出せないからデジはるさんの冷凍レスキューで救われた農家も多くいる。救世主ですよ」

糸満でマンゴー農家を営む漢那さん。デジはるの取り組みに大きな期待を寄せています。

かんな農園 漢那宗貴さん
「農家が安心して農作物を作りながら農家自身がこういう販路があるんだ、インターネットは怖くないんだと。デジタルを活用しながら、全国にも広がっていけば日本の農業も活性化される」

デジタルの力で、フードロスを防ぐだけではなく、未来に向けて持続可能な農業を目指す『デジタルはるさー』の取り組み。今後注目を集めそうです。