「フェーン現象」「干ばつ」ハワイ山火事拡大の背景

小川彩佳キャスター:
この火災が拡大した理由について、気象予報士の森田さんに聞いていきます。

森田正光気象予報士:
今回、気象的にはマウイ島の南1000キロぐらいをハリケーンが通り、その影響が大きかったと思います。ハリケーンが南海上にあると、東風が吹きますから東風が山を越えて「フェーン現象」が起こります。フェーン現象というのは気温が上がりますし、空気が乾燥するのが当たり前になりますので、それで火災も大きく広がったと考えられます。

もう一つ考えられるのが「フラッシュ干ばつ」という現象です。普通の干ばつは半年~1年ほどの長期に渡るものですが、フラッシュ干ばつは1か月ぐらいの間に急激に乾燥して土壌が乾きます。草木が乾燥状態になって燃えやすくなったりします。

山本恵里伽キャスター:
5月のマウイ島の干ばつの強度は低いですよね。

森田予報士:
そうですね。ところが、6月から7月、特に8月8日(火災当日)になってからマウイ島が乾燥していますよね。

山本キャスター:
かなり乾燥が進んだということがわかりますね。

森田予報士:
1か月間で乾燥区域が20%ぐらい広がったということです。

山本キャスター:
「フェーン現象」と「フラッシュ干ばつ」が一つの大きな要因ではないかということですね。

森田予報士:
それと地球全体で、もう一つ考えていただきたいことがあります。

山本キャスター:
実は、世界で見てみてもこの夏は観測史上“最も暑い夏”を迎えていると指摘されています。NASAの発表では、2023年7月の1か月間の世界の平均気温は、記録のある1880年以降、最も高くなったと発表されています。

森田予報士:
1.18℃も高かったと。特に北アメリカ、北アフリカ、南アメリカ、南極では、なんと4℃も上昇しています。毎日、4℃高いって信じられます?日本列島も赤いですよね。だから、地球全体で気温が上がったということが言えます。

山本キャスター:
こうした気温の上昇、そして温暖化についてNASAは「人為的に排出される温室効果ガスによるもの」と指摘しています。さらに温暖化が進むにつれて「人々や生態系にも影響が出るだろう」、太平洋の海面水温が高くなる「エルニーニョ現象によって、2024年2月~4月に大きな影響があると予測」しています。

森田予報士:
エルニーニョ現象は太平洋の海水温が高いことなんですが、これが起こると地球全体の温度が0.2℃ぐらい底上げされます。さらに言うと海水温が高いことによって偏西風が北側に持ち上げられたり、偏西風が蛇行しやすくなったりして、より干ばつなどの影響が大きくなるということが知られています。

小川キャスター:
日本ではどんなことが起きそうですか?

森田予報士:
この冬は暖冬になると思います。冬になると雪が少なくなって、2024年の夏に水不足が起きるかもしれません。