DLロンドンは5万人の観衆「記憶はなくても、ガチガチにはならなかった」
――DLロンドンの4×100 mリレーは日本チームの2走で、37秒80の今季世界最高タイで優勝しました。どんな走りでしたか。
栁田:記憶がないんです。観客が5万人入っていて、そんな大勢の前で走る経験がなかったので圧倒されました。走高跳のバルシム選手(カタール。世界陸上3連勝中)たちが跳ぶ1本1本にどよめきが起こったりしていて。リレーになったら地元のイギリスが2チーム出ていたので、すごい盛り上がりだったんです。気づいたらバトンを渡し終わっていました。雰囲気に飲まれた、と言えるかもしれません。2つ外側にイギリスの速い人(Z・ヒューズ。100m9秒83)がいて、それ見たらやばいなと思ったので、3走の小池(祐貴・住友電工)さんだけ見て走りました。動画を見直すと、さすがにアジア選手権より状態が落ちていたかもしれません。ヒューズ選手にはちょっと差を広げられていましたし。
――それでもバトンパスは失敗していなかったと思います。
栁田:そうですね。飲まれて記憶はなくても、ガチガチにはならなかったのだと思います。移動、移動で時差も抜けきらない感じでしたが、タイからは何も考えない、無心の走りを心がけているので、記憶がなかったロンドンも、何も考えずに走ったという考え方もできます。タイ以上ではなくても、タイと遜色ない走りはできたのかな。自分もリレーを走れると感じました。帰ってきて僅かですが(追い込む)トレーニングができる期間があるので、もうちょっとだけ練習をして、そのあと調子を上げていければいいのかな、と思います。
――DLロンドンの経験が、ブダペストにも役に立ちそうですか。
栁田:そうですね。大きい競技場ということも同じだと聞いてますし、ヨーロッパは陸上の注目度も高くて人が集まることも同じでしょう。もちろん、オレゴンで経験したこともあります。ロンドンのように記憶がなくなるほど集中できていれば、それはそれでいいことなのかもしれません。その雰囲気に飲まれて固くならないよう、気をつけられるだけで十分なのかな、と思ってます。
世界陸上ブダペスト。「100mを3本走るのが最大の目標です」
――ブダペストの100mで決勝の舞台に立つイメージを持つようになったのは、いつ頃からですか。
栁田:アジア選手権で最後までしっかり走れて、同じ走りができれば、という考え方ができるようになり、その頃から現実的な目標として考えられるようになったと思います。勝負強さという点に関しても、高校時代は勝負強いと言われていましたが、最近「勝負強くなくね?」と思っていました。アジア選手権を勝つことができたので、勝負強さも取り戻せたかなって思います。
――その成功体験で世界陸上も。
栁田:アジア選手権の10秒02(±0)とか、土江先生は予選の10秒10(-0.5)の走りが一番好きって言ってくださるんですけど、世界陸上もそのイメージで走れたら次のラウンドにも進めると思います。どこをどうするか、というより、本当に同じ走りをするだけでいい。世界陸上は今年一番大事な試合なので、自分の力を出し切ってファイナルに残る記録を出し、100mを3本走るのが最大の目標です。そこはしっかり、ブラさずにあと2週間、やっていければいいかなと思ってます。
――今日(富士北麓ワールドトライアル)の走りで世界陸上への感触も良くなった?
栁田:まだまだ調子を上げていける、と感じました。だからと言って変に気負わずに、やれることをちゃんとやって、最高のコンディションで世界陸上に臨めればいいのかな、と思います。ただ先ほど話したように、アジア選手権と同じことをやれればいい。どこがどうとかはレースになったら気にせずに、いつも通りの走りをするだけだと考えてやっていきます。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)













