青森ねぶた祭で3日、デビューをはたしたねぶた師、塚本利佳さん。作品にこめたのは、これまで支えてくれた人への感謝の思いです。晴れやかな表情で迎えた初陣、そしてこみ上げてきた思いとは。
夜空に色鮮やかに浮かび上がり、躍動するねぶた。手がけたのは新人ねぶた師の塚本利佳さんです。
※新人ねぶた師 塚本利佳さん(38)
「がんばってきてよかった。苦しい時もあったので、それを上回るうれしさがある」
中泊町出身の塚本さんがねぶた師を志したのは、2011年です。ねぶたの家ワ・ラッセで第6代ねぶた名人北村隆さんが制作した大型ねぶたを見たことがきっかけでした。
北村さんへ弟子入りして修行を重ねた塚本さん。その努力を認め、北村さんは、自身が30年以上手がけてきた運行団体、青森山田学園の制作を託しました。
※3月18日 北村隆ねぶた名人(75)
「いずれは弟子を巣立ちさせないとだめ。それが師匠としての夢でもある」
※同日 塚本さん「(引き継ぐのが)いいのかなと思いました。自分でいいのかな。ちゃんとできるのか、不安」
初めての大型ねぶたの制作は、不安で揺らぐ心と向き合う日々でもありました。とくに悩んだのは、骨組みです。手がかりとなるのは、自分が描いた下絵だけ。ここからイメージを膨らませていかに立体的に仕上げるか。なかなか、作業が進みません。
※5月7日 塚本さん「こだわっているより、どうしたらいいのか迷っている。自分が責任をもってやらないといけないので、すごく難しい」
節目ごとに北村さんからアドバイスをもらい、答えを探し続けました。
※7月3日 塚本さん「基本的には自分に自信がないタイプなので、悩みながらやっています。でも、悩めるのも幸せだと思いながら、ありがたいと思ってやっています」
ねぶた師として独り立ちすることの重みを肌で感じた塚本さん。自分の作品は、観客の心を動かすことができるのか。常に、自分へ問いかけながら大型ねぶたを作り上げました。
※塚本さん「逃げ出したい時もあったけど、周りの人にすごく支えられたので(涙で言葉を詰まらせる)がんばることができたと思います」
憧れ続けた晴れ舞台。
デビュー作は、疫病退散の守り神とされる源為朝を題材にしました。そこに込めたのは、コロナ禍のなかでも自分を支えてくれた人への「感謝」でした。
※塚本さん「スタートだと思います。支えられているので、そういう人たちに恩返しできるように、大切にしていきたい」
ねぶたを作れることの幸せと、ねぶたを通して観客へ届けられる思い。その大きさを肌で感じ、塚本さんは新たなスタートを切ろうとしています。