連日、ニュースで取り上げられる闇バイトに関する事件。なぜ実行犯たちは、白昼堂々かつ杜撰な方法で犯行に及んでしまうのか…と疑問に感じずにはいられない。中には見ず知らずの人物の指示に従い、犯罪に加担してしまったケースもあると言う。
“闇バイト”にどのように誘われ、そしてなぜ信じ込んでしまったのか…。元実行犯の男性への取材をもとに実像に迫りたい。
(8月5日土曜 ごご2:00放送「直撃記者 #お話聞かせてもらっていいですか?」取材分より 担当:長谷川亮)
「『絶対に捕まらない』と言われ信用してしまった」 闇バイト元実行犯を直撃取材
Aさんは、闇バイトに自ら応募したことがきっかけで、40歳のときに詐欺と窃盗の容疑で逮捕され、有罪判決を受けた。
彼が闇バイトに手を出したきっかけは“借金”だった。新車のローン10万円分の返済が滞り、まとまったお金を工面する必要があった。金融機関からの追加融資も受けられず、ツイッターで“高額バイト”と検索し、「1日最低5万円から」と書かれた投稿を見て応募したのだった。
Aさん:
「今だったら、『1日最低5万円から』なんておいしい話があるわけないと思えるが、あの時は、とりあえずお金を払わないとって必死だった」
その後、Aさんは指示役とされる人物とメッセージアプリ“テレグラム”でやり取りを始め、そこでようやく“高額バイト”の中身が、特殊詐欺の“受け子・出し子”であることを知る。
Aさん:
「お年寄りの家に行ってキャッシュカードを預かり、指定されたATMで金をおろす。最初聞いたときに、これは犯罪だと分かったんですが、指示役から『絶対に捕まらない。絶対に大丈夫だから。ニット帽とサングラス、マスクをしておけば顔も見えないし問題ない』と言われたのを鵜呑みにして、信用してしまった」
Aさんが行った犯罪は、いわゆる“キャッシュカード詐欺”と呼ばれる特殊詐欺の一種だ。ターゲットである高齢者の自宅を訪れ、銀行員などを名乗ってキャッシュカードを騙し取り(=受け子)、指定されたATMから現金を引き出す(=出し子)というもの。
このとき3万円の報酬を受け取った。ただ、自分の母親と同じくらいの年齢の高齢者を騙すことに申し訳なさを感じ、指示役に「これ以上続けられない」と伝えた。しかし、彼は結局、その後も特殊詐欺を繰り返してしまう。
「あの頃に戻れるなら戻りたい」 個人情報が“人質”に…闇バイトの本質
Aさん:
「指示役にやめたいと言うと、『じゃあ親にバラしますよ。会社にもバラしますよ。どうなるか分かりますよね。冷静になって考えた方が良いですよ』と脅された。応募するときに、保険証、実家の住所、親・きょうだいの名前、勤務先などの情報まで伝えてしまったので、もう逃げられないなと思った」
その後も、指示役から犯行連絡は次々と送られてくる。個人情報を“人質”に取られてしまったAさんに“断る”という選択肢はなかった。最初の犯行から4か月、ついにAさんは詐欺と窃盗の容疑で逮捕された。
逮捕後、Aさんの生活は180度変わってしまう。
彼には当時、交際3年になる彼女がいた。その女性とは結婚の約束までしていたが破局。働いていた会社も自主退職に追い込まれた。今は3畳一間の部屋で暮らしている。10万円欲しさから闇バイトに手を出してしまったことで、すべてを失ってしまったAさん。
拘置所にいたとき、姉から1通の手紙が届いた。その中では、「困っているなら相談してほしかった。なんで言ってくれなかったのか」と、やり場のない悲痛な家族の思いが綴られていたと言う。もし、Aさんが「車のローンを返済するため10万円を貸してほしい」と相談できていれば、特殊詐欺の被害者を生まずに済んだかもしれない。
ーー「当時を振り返って、自分の犯してしまった罪についてどう感じるか」
Aさん:
「本当とんでもないことをしてしまったなと感じる。被害者の方には本当に申し訳ない。色々な人に迷惑をかけてしまった。もし、あの頃に戻れるなら戻りたい。今となっては後悔でしかない。ハイリスク・ノーリターン、それが闇バイトだと思う」
未成年が利用されてしまう闇バイト 増加の背景には“画面世代”特有の事情も…
更生保護施設で暮らすBさん。16歳のとき、犯罪だとは分かっていたが、SNSで見つけた“高額収入”という投稿に目がくらみ、闇バイトに応募。特殊詐欺に加担し、逮捕されてしまう。
当時、お金欲しさに闇バイトに加担してしまったBさん。高齢者を騙すことに後ろめたさを感じ、指示役に「やめたい」と伝えたこともあるが、結局抜け出すことはできなかった。
ーー「なぜ途中でやめることができなかったのか」