Bさん(19)
「最初は怖かったです。でも、ホテル暮らしをしているので、お金を稼がないといけない」

--「ちなみに、売春が違法だということはご存知ですか」

Bさん(19)
「はい。でも、お金がなくて。いま手持ちが700円しかない。売春しないと生きていけない」

--「生活支援の相談窓口などもあるが、なぜ“立ちんぼ”なんですか」

Bさん(19)
「支援とかは嫌です。わかんないけど、嫌なんです」

--「“立ちんぼ”は、今後も続ける予定ですか」

Bさん(19)
「お仕事が見つかったらやめるかも。コンカフェで働きたいんです。だって、かわいいじゃないですか」

後日、取材で大久保公園を訪れると、Bさん(19)は変わらず路上に立っていた。

問題解決の糸口は?「その日から生活に困らないような支援や選択肢を」

Aさん(20)とBさん(19)、この2人だけをとっても「立ちんぼ」をする理由は異なる。実際、多くの女性に話を聞くと、やはり彼女たちが抱える事情、背景は様々だ。

では、問題解決に向けて何が必要なのか。女性の支援を行うNPO「レスキュー・ハブ」の坂本代表は“立ちんぼ”をする女性たちを法律で処罰するだけでなく、具体的な支援策を提示することが不可欠だと指摘する。

NPO「レスキュー・ハブ」坂本新代表
「私たちがこれまで支援してきた女性たちの中には、知的障害やADHDといった発達障害などが原因で仕事を辞め、やむを得ず、売春という手段で生活費を稼ぐしかない人もいた。売春で得られるお金が唯一の収入になっている方が一定数いる中で、『売春は違法だからやめなさい』ということだけで片付けず、彼女たちがその日から生活に困らないような支援や選択肢を行政などが具体的に示していく必要がある」

こうした声に呼応するように、警察も「立ちんぼ女子」の支援に乗り出した。。2022年4月、警視庁は売春する女性を支援につなげる専門相談員を配置。1年間で15人を自治体の福祉事務所につなげた。

さらに、2024年4月からは、女性支援に関する新たな法律(=「困難女性支援法」)も施行される。性犯罪の法改正などに取り組む、弁護士で元法務大臣政務官の宮崎政久衆院議員によると、「困難女性支援法」では、大久保公園界隈の「立ちんぼ女子」など経済的困窮や家庭状況などに困難な問題を抱える女性の福祉増進のため、行政と民間団体が協力し、支援強化を図ることが謳われているようだ。

「立ちんぼ女子」をめぐる問題解決には「買春する男性」への対策も急務

今回は「売春する女性たち」に焦点を当てた。しかし、「買春する男性たち」の存在も無視できない。そこで、男性にも話を聞いてみたのだが、そのほとんどが「買春側への罰則規定がない」ことを認識した上で女性に声をかけていた。中には、「お金に困っている女性を助けている」と自らの行動を正当化する人までいた。1956年に成立した売春防止法。約70年の月日が経過する中で、法律が実態に追い付いていない部分があると感じてしまう。

とは言え、厳罰化に向けた取り組みは一筋縄ではいかない。長年、性犯罪の法改正に携わってきた宮崎議員は「これまでも国会の中で色々な議論があった。売春防止法を廃止しろという意見もあれば、売春・買春ともに厳罰化するべきという意見もある。ただ、罰則を定めるということは、国の決まりの中でも“核”となる部分であるので、様々な意見を聞き、議論していかなければいけない」と法改正の難しさを口にしていた。この歪な状況を改善するためにも速やかな議論が待たれる。

路上に立つ女性たちにとっては「今」が一番大切なのかもしれない。しかし、売春によって自分の心や身体を傷つけることで失ってしまうものが間違いなくある。そのことにきちんと目を向けてほしい。「今」ではなく、「将来」のことを考えたとき後悔のない人生を送ってほしい。そう感じずにはいられない。