「この子たちは本当にいい子」素振りをしていた場所で毎朝、清掃活動
当時、甲子園大会に出場する愛媛県の代表校の定宿は、兵庫県尼崎市にある旅館「尼宝館」(にほうかん)。多くの球児たちを温かく支え続けてきたその63年間の歴史は、愛媛の高校球史の1ページといっても過言ではない。
また、地元テレビ局や地元新聞の取材班たちも、甲子園代表校取材の度に尼宝館を訪れては、勝利した試合翌朝の選手たちの表情をリポートしたり、時には大部屋で大盛飯をかきこむ選手達の様子を取材したりと、大変お世話になった旅館である。
そして21年前の夏、旅館を訪れた私に「女将の田中美佐子さん」は小声でこう一言。
「この子たちはね、ほんとうにいい子たち」
聞けば、川之江ナインは、旅館内ではもちろん、夕食後、素振りをするために訪れていた最寄りの「出屋敷駅」前で毎朝、清掃活動に取り組んでいるという。
「挨拶もしっかりしているし、もう近所の人からもね、評判なの!」
そう言って目を細める田中さんの嬉しそうな表情は、今でも瞼に浮かぶ。その夏の甲子園大会終了後、川之江高校野球部には兵庫県から感謝状が贈られた。

















