祭りの2週間前、試験的に手筒花火を打ち上げて、火の上がり方を確認します。金武さんは、この日までに手術を終わらせる予定でしたが、眼帯は付いたままです。
(花火写真家・金武武さん)
「祭りの日は、片目で勝負するしかない」
実は、目の状態が悪くなり手術ができなくなっていました。写真家として40年以上活動する中で、初めて片目で撮影する事になったのです。それでも、何十年も身体に染みついたシャッターを切る動きに、迷いはありません。
(花火写真家・金武武さん)
「カメラの操作は全く問題ない。ピントの確認も問題ない。何十年もやり続けているからね」
「遺影にしたい」打ち手も絶賛の出来栄え!ベストショットは…

2023年7月21日、豊橋祇園祭当日。奉賛会の公認カメラマンとして、参加する8つの町全てをきれいに撮ってあげたい、という使命でカメラを構えます。この日は、金武さんを手伝いたいと、知り合いのカメラマン2人が助っ人として撮影に加わりました。
迎えた手筒花火の打ち上げ本番、金武さんが30秒間で狙う瞬間が2つあります。1つ目は、吹き上がる火の粉の軌跡。シャッタースピードを4分の1秒とかなり遅くして、火の粉の光を軌跡として捉えるのです。打ち手がすぐ煙に包まれるので、表情を含め最高の一瞬を狙います。2つ目は手筒花火の最後、爆発音とともに筒の下から炎が吹き出す瞬間。この「ハネ」と呼ばれる瞬間を捉えるには、シャッタースピードを125分の1秒に切り替えなければなりません。
しばらくすると、いつも通りの方が集中できる、と眼帯を外した金武さん。
(花火写真家・金武武さん)
「(右目の視界は)ぼけていますけど両眼で見た方が、爽快感が違う」
写真を撮りながら、助っ人の2人にも指示を飛ばします。長年の経験で身体を動かすその姿に、右目が見えないハンデは感じられません。約3時間にわたる撮影で撮影された写真を打ち手に見せると…。
(手筒花火の打ち手)
「最後のハネが最高ですよ。僕ら素人じゃ(撮るのは)無理。(携帯電話の)待ち受けをこれに変えます」
「死んだときは、(遺影を)この写真にしよう。何回か撮ってもらってるけど、今回はとりわけいいね!」

今回、金武さんが撮った写真は4000枚以上。その中からベストショットに選んだのは、火の粉が降り注ぎ、打ち手の頭や腕に当たって人間のシルエットが出た一枚。打ち手の表情・火の粉の軌跡、全てを捉えた最高の出来栄えです。
(花火写真家・金武武さん)
「火の粉を浴びても動じず、熱さに負けずじっと耐えている。(Qいままでの出来と遜色ない?)もう全然OKですね。気に入っています」
400年の伝統ある手筒花火。その一瞬の美しさを切り取って後世に残すため、金武さんの取り組みはこれからも続きます。
CBCテレビ「チャント!」7月24日放送より