地下河川への入り口は海岸にぽっかり開いた洞窟で、その洞窟の中を川が流れているのです。ボートで入っていくと、中は奇岩がひしめく鍾乳洞。「大聖堂」と呼ばれる巨大な空間もあり、照明を当てると無数のコウモリが飛び交います。地底の川に不気味な巨岩が林立する様子は、魔境というか奇観というか、これまたインディ・ジョーンズ的世界そのものです。



地底の川の全長は8.2キロ。番組では特別に許可を得て水中撮影も行ったのですが、魚のウロコのような文様がついた岩壁が水中に広がっていて、幻想的な映像を撮ることができました。これは満潮時に海から流れ込む水と川の上流から流れてくる水がぶつかり、その複雑な水流に巻き込まれた砂が洞窟の岩肌を削って出来たものです。


プエルトプリンセサの地底の川は、セントポールという山の地下を流れています。この山を登ると中腹に巨大な穴が開いていて、これも地底の川に繋がっているといいます。実はこの山全体が雨水に溶けやすい石灰岩で出来ていて、降った雨が浸食して山腹に巨大な穴を生み、さらに地中に染みこんだ雨水が浸食して奇怪かつ巨大な地下洞窟が出来上がったわけです。
世界遺産ではありませんが、パラワン島にはエルニドという青い海とサンゴ礁で有名なリゾートもあって、やはり石灰岩で出来た島々が点々としています。その島々も雨風に浸食されて不思議な形になっており、エルニドの見どころになっています。

2500年以上の歴史を持つ古い港町「シラクーサ」
そして最新作「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」で登場する世界遺産がイタリア、シチリア島のシラクーサです。シラクーサは2500年以上の歴史を持つ古い港町で、海洋民族だった古代ギリシア人がシチリアに渡って築きました。今でも劇場や神殿など、ギリシア人の残した遺跡を見ることが出来ます。
最新作なので映画のネタばらしにならないように多くは語りませんが、番組で撮影したシラクーサの空撮と見比べると、街の全景など映画でも忠実に描かれています。シチリアは地中海のヘソみたいな位置にあるので、古代からさまざまな民族・文化が交錯してきました。

シラクーサも古代ギリシアの遺跡、古代ローマの遺跡、さらにギリシア人が渡ってくる前の先住民の遺跡も含めて、「シラクーサとパンタリカの古代遺跡」という名前で世界遺産に登録されています。


ご存じのように、インディ・ジョーンズは考古学者です。世界遺産には古代遺跡が多いので、この段階で親和性があります(ちなみに彼のモデルは複数いるとされますが、そのひとりハイラム・ビンガムは、有名なペルーの世界遺産「マチュピチュ遺跡」を発見した人物です)。そもそも世界遺産に近しい考古学者が、秘宝を求めて世界各地の名所旧跡を飛び回るストーリーなので、結構な頻度で世界遺産が出てきています。今回紹介した「ペトラ」と「シラクーサ」以外にも登場する世界遺産はあるので、チェックしながらインディ・ジョーンズのシリーズを観るのも一興かと思います。
執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太