先月28日の富山県東部を襲った大雨で、浮き彫りになったのが白岩川ダムの緊急放流です。住民への連絡体制のあり方です。

これは、記録的な大雨が降った先月28日の白岩川ダムの映像です。午後1時時点での水位は低くこの程度です。

しかし、その後、午後2時から3時までの1時間にダム上流で88ミリを超える雨を観測。一気に水かさが増します。

ダムへの流入量を見ると午後1時にはわずか1秒あたり2トンでしたが午後3時40分、1秒あたり181トン。90倍を超える水がダムに流れこんできました。

午後3時49分、ダムの管理事務所はこのままだと限界水位を超えると判断し、県に緊急放流を午後5時から実施する意向を伝えます。しかし、その30分後、午後4時10分。ダムへの流入量は1秒あたり最大422トンまで達しました。

白岩川ダム管理事務所 水野豊彦 所長:「1秒あたり422トン。普段流れている量が1トンから2トンですので、桁が三桁ですのでまさに桁違い」

そして、午後4時20分、ダムはついに限界水位を超え予定よりも40分も早く緊急放流に踏み切りました。

緊急放流とはダムが貯水量の限界を超えて崩壊したり制御が効かなくなる最悪の事態を避けるため上流から流れてくる水とほぼ同じ量の水を下流へと流す緊急的な操作です。

緊急放流の際は管理事務所が実施30分前に川の周囲に設置されたサイレンで下流住民に連絡することにしていましたが…。午後4時20分の緊張放流とサイレンを鳴らすのが同時になってしまいました。

サイレンがなってからおよそ1時間10分後午後5時半ごろの白岩川橋周辺の様子です。女性の自宅には白岩川から溢れ出した大量の水が流れ込んでいましたが逃げ遅れました。その原因は…。

女性:「今から放流しますって、家に帰ってきて、そのときは何ともなかったんだけど…30分ほど経ってから(水が)どーっときて…」
記者:「避難しないといけないってことは知っていた?」
女性:「そういうのは知らなかった。消防の人が(救助に)来てようやくわかった。それまで全然気が付かなった」
記者:「避難してくださいっていう無線の呼びかけとかは?」
女性:「入ったかどうか知らないけど、頭が動転しているからわからない。聞いていない。言っていたかもしれないけど覚えていない」

白岩川ダム管理事務所の水野所長は…。

白岩川ダム管理事務所 水野豊彦 所長:「スピーカーでのアナウンスは大雨が降っているなか聞こえづらいという課題もありますし、サイレンを2回繰り返すくらいのサイレンでもよかったのかなと思います」

今回の緊急放流について専門家は…。

中央大学理工学部 手計太一教授:「緊急放流の判断までが思いっきり勢いよく(上流から水が)流入してしまったのかなと思います。県は(富山県の河川が)急流河川だということを一般の方々にもっと周知しないといけないと思います。雨がやんでいるのに水位がどんどん上がってくるっていうのは、富山県特有だと思いますので、雨がやんでも安心とは思わないということを、改めて富山県の方は強く認識していただきたいと思います]

富山県内の河川は流れの激しく、下流では前が降っていなくても上流から一気に激しい雨が降ってくることを住民一人一人が意識することが重要だといいます。

またサイレンの鳴らし方についても…。

中央大学理工学部 手計太一教授:「アナウンスが聞こえない場合も多いと思います。一発で緊急放流ってわかるような音にするとか、そういった工夫は今後あってもいいんじゃないかなと思います」

豪雨被害から2週間。いつ来るかわからない豪雨に備えて改めて住民ひとりひとりの意識と緊急放流時にどうのように住民に対して情報を提供するのか対策が求められます。