
石橋真 アナウンサー
そうですか。でも、すごくお2人がバッテリーを組まれた印象が色濃く残っていまして、北別府さんの性格であるとか、なんかすごく求道者のような形で周りも全て寄せ付けないような雰囲気を感じていたんですけど、実際に受けてらっしゃって、性格とか、どんな雰囲気だったんですか?
野球解説者 達川光男 さん
今、石橋さんがいろんな人から伝え聞いて、それは間違いないです。もう本当にね、北別府が登板する日、誰もロッカー3メートル以内は近づかない。黙ってスーッと。それで離れたら、わあわあと。「うるさいのお。聞こえるじゃないか、ここまで」いうぐらい。ぼくは時々、行って、「おい、北別府のロッカーに聞こえるぞ。静かに、静かに」と言って…。もう本当に瞑想というか。旧市民球場のロッカー、本当に入ったらびっくりするようなロッカーですよ。板ですよ。そこで座布団を敷かずに硬いところにずっと座って、修行僧のようにじーっと集中するというか。
サインもね、時々、頼まれるじゃないですか。たとえば東京からきょう来て、きょう帰る人とかおるじゃない。「北別府さん、サインもらえんですかね」って、1枚ぐらいしてくれやと思ったこともありましたけど、絶対しない。絶対に誰にもしない。もう、それがわかっているから誰も頼まない。北別府のロッカーにそうだね、ぼくの背ぐらい色紙がたまっているときがあったよ。
石橋真 アナ
やっぱり野球一直線、野球だけに向き合って…
達川光男 さん
もう全然。ロッカーもびっくりするぐらいきれいですよ。
石橋真 アナ
そうなるとプライベートの北別府さんだとか、たとえば息抜きで飲みに行ったりとか、誰か一緒に連れ立ってということはなかったんですか?
達川光男 さん
いや、ありましたよ。津田恒実 とか、山崎隆造 とか仲がいい人いましたよ。マネージャーもあったし、あと裏方の選手を、ブルペンキャッチャーとか、そういう方を連れて食事へ行っていましたよ。選手同士で行くのは、もうほぼしないです、いろんな意味で。
石橋真 アナ
ライバルだったりもしますし…
達川光男 さん
それもあるし、やっぱりレギュラーが決まっているといいながらも控えの選手もいたり、いろいろいるから。やっぱりピッチャーで投げていて、ファインプレーばっかりしてくれればいいんですが、エラーをすることもあるし、いろんなことがあるから、やっぱり勝負に徹していたというところがありますね。
石橋真 アナ
いやあ。逆にそういう姿って本当にファンの心をつかむような…。「北別府、すごいね」っていう声もすごく聞きますし、著名な方からも。「北別府さん、すごいね」っていう雰囲気でしたか。
達川光男 さん
もう本当に彼は広島球団のために全身全霊を込めて1球を、彼の1球1球は本当にそんじょそこらじゃないですよ。ラーメンでいえば3日~4日、スープを煮込んで煮込んで煮込んで、ようやくできあがったものを売り出すという感じで、北別府の1球はブルペンからもう始まっていました。ブルペンからというよりも家、家庭から始まっていました。睡眠・食事、その他のいろんなことから。
だから奥さんが最後、主人が亡くなったときのあいさつ文に「ボールより重いものを一切、持ちませんでした」と。ボールより重いものを持つと、ちょっと狂うから微妙に。わが子でさえ、3人子どもさんがいらっしゃったと思うんですが、一度も抱っこしていないと。
石橋真 アナ
でも、それぐらいに自分の仕事である野球を、決して邪魔するわけじゃないですけども、そういう考え方で突き進まれたってことですね。
達川光男 さん
奥さんでさえ、「この人、おかしいんじゃないか」と。常識的に考えて、わが子を抱かない親なんているのかというぐらい。だけど、それぐらいストイックというか、野球に、1球に命をかけていたという。
田口麻衣 アナウンサー
すごい情熱。