7年前、富山県滑川市の40代の中学教諭が、部活動などの長時間労働で過労死したことをめぐり、遺族が富山県と滑川市に損害賠償などを求めた裁判で、富山地裁は富山県と滑川市にあわせて約8314万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

この裁判は、2016年7月、滑川市の公立中学校の教諭だった40代の男性が「くも膜下出血」を発症し死亡したのは、市側が勤務時間を適切に管理する義務を怠った安全配慮義務違反によるものだなどとして、男性教諭の妻と子どもたちが、県と市に対し、およそ1億円の損害賠償を求めたものです。

男性教諭は当時、理科の教科指導や、進路相談も必要となる3年生の担任に加え、女子ソフトテニス部の顧問を兼務していました。この中学校のソフトテニス部は富山県下でも強豪として知られ、土日も部活動の練習や試合が盛んでした。

判決によりますと、男性はくも膜下出血を発症する前の6か月にわたり、月あたり平均89時間の時間外勤務に従事。過労死ラインとされる月80時間を長期間にわたり上回っていました。特に5月30日~6月25日までは27日間連続で勤務、1日の休みをはさんで、6月27日~7月21日まで25日間連続勤務となっていました。53日間で休日は1日だけです。2018年、地方公務員災害補償基金県支部は、男性が亡くなったのは長時間労働による「公務災害」と認定しています。

2019年、妻側は夫が死亡したのは、市側が勤務時間を適切に管理する義務を怠った安全配慮義務違反によるものだと主張。一方、市側はこれまでの裁判で、部活動については「教員の自由裁量によって行われた」などと反論していました。

部活動について、富山地裁の判決では、該当の中学校では基本的にすべての教員がいずれかの部活動顧問を担当し、その配置決定には校長および校内の校務運営委員会が関与していたこと、さらに、朝練習には顧問の指導の下に実施することや、放課後練習でも生徒が帰宅するのを見届けることなどが取り決められていたとして、「顧問としての業務が全くの自主的活動の範疇に属するものであったとはいえない」としています。

また、争点のひとつとなっていたのは、男性教諭の勤務状況を管理すべき校長が安全配慮義務を怠ったかどうかで、滑川市側は部活動指導について「校長が具体的な指揮、命令をしていなかった」と主張。判決では、部活動指導業務記録簿や、部活動指導に関する休日手当の算定の基礎となる特殊勤務実績簿に校長が押印していたことなどから、男性教諭が過重な業務に従事していることは客観的に認識できたとして、「是正すべき義務を負っていた」と校長の安全義配慮義務違反を認めました。