政権が自分を守るためのリソースを全く持っていない状況…これは政権の正統性の崩壊

ロシアの独立系世論調査機関『レバタセンター』のグドゥコフ副所長はこう話す。

露・独立系世論調査機関『レバタセンター』 グドゥコフ副所長
「今回のプリゴジン氏の部隊の進行には一切抵抗が無かったことに注目していただきたい。クレムリンには部隊が800キロも移動する間、進行を止めることができる警察や国家親衛隊など十分なリソースが無かったのです。これは1991年のクーデターの状況に似ています。政権が自分を守るためのリソースを全く持っていない状況です。これは政権の正統性の崩壊。拡大する国内問題の不安定化の重要な兆候です。(中略)今の体制は大きな戦争に対する恐怖を基盤としています。情熱や愛国心ではなく、恐怖感と無気力に基づいています。敗北と占領地域からの撤退は間違いなく深刻な政治危機を起こしロシア指導部の権威の低下につながります」

“プリゴジンの乱”が似ているという1991年のクーデターとはどんなものだったのか…。

朝日新聞 駒木明義 論説委員
「ゴルバチョフさんが始めた改革に反対する保守派が、クリミア半島に静養に行っていたゴルバチョフさんを軟禁して病で執務遂行が不可能になったということにして非常事態国家委員会というのを作って我々が全権を掌握したとしたものです。ですが、この時、軍は様子見でどちらにも積極的につかなかった。結局後に大統領になるエリツィンが激しく抵抗して、これはクーデターだと言って対立したわけですが、ロシア軍というのは内政上の争いには距離を置くという、どちらかに乗って大きく状況を動かす力にはならないという“伝統”があるんですね。だから今回ロシア軍がワグネルを止めなかったのも、これは内部の話である、と。外国の侵略者とは戦うけれど、内輪もめには距離を置く。そういう習慣が働いた…」

「何らかの取引があり、秘密の合意に達した。これで終わりではない」

1991年のクーデターは失敗に終わった。だが、その年の暮れ、ソ連は崩壊する。“似ている”というプリゴジンの乱も失敗に終わったようだが、果たしてロシアは…、プーチン政権は、どうなるのだろうか。

露・独立系世論調査機関『レバタセンター』 グドゥコフ副所長
「今回の反乱でも恐らくいつものように結果的に何らかの取引があり、秘密の合意に達したと思われます。しかし問題解決には至っていません。問題が棚上げされただけです。今後どうなるのか注視していきたいと思います。これで終わりではないでしょう…

(BS-TBS 『報道1930』 6月26日放送より)