◆社会にメッセージを発信するアーティストに

そこからの彼女の快進撃はすごかった。もともと“恋多き女”という一面はありましたが、そういうことに関しても、メディアできちっと物申していきました。

代表曲の一つ「thank u,next」(2019年)の歌詞には「みんないろんなこと言うけど、私のことゴシップ的に言う人いるけど、私のことは私で決めるから、今までのお世話になった人ありがとう。私生活も含めて。だけど、私次に行く」という、マニフェストのようなフレーズがあります。

こういう「もの言う女性」という強いイメージをどんどん獲得しながら、もともと歌はうまいと言われていたので、わかりやすく言うと、当然セールスも伴いました。

彼女、ダルトン・ゴメスという不動産王と結婚したんです。過去の交際相手にラッパーのマック・ミラーがいましたが、彼は2018年に薬物もしくはアルコールの過剰摂取で亡くなっています。そのときもアリアナ・グランデは元恋人に対してきちんとコメントしています。

ちょっと詩的な言い方ですが、彼女は身体の中に悲しみを強さに変えるような装置を備えている感じがしました。それだけでなく、社会や政治に対して、たとえば銃規制に関しても表に出ていって、デモにも参加しています。

アーティストが政治的発言をしても、それがきちんと評価されるのはアメリカ社会だからかもしれません。彼女に憧れる日本人アーティストもたくさんいますが、彼女と同じような活動ができるかというと、日本ではすぐにはできない状況ですよね。

でも、彼女がやっていることに影響を受けて、実際に行動を起こすアーティストはこの日本でも5年後、10年後に出てくるんじゃないかと思っています。いずれにしても、トップランナーとしてのアリアナ・グランデのこれからの30代の活躍、大変楽しみです。