◆コンサート会場で自爆テロ

2017年5月に、一つの転機となるできごとがありました。前年に出したアルバム「デンジャラスウーマン」世界ツアーのイギリス・マンチェスター公演。終演後のコンサート会場の外で、自爆テロ事件が発生し、死者22人、負傷者59人という大変忌まわしい悲劇が起こりました。

その後に予定されていたロンドンやベルギー、ポーランド、スイス、ドイツといったところの公演は当然、中止に追い込まれました。アリアナ・グランデ本人も、大変な心の傷を負ったと言われています。

自爆テロの犯人は特定されたものの、事件の背景は不明のままです。過激派組織のイスラム国が犯行声明を出しましたが、それを裏づける証拠はありませんでした。それにしても、ポップアーティストのコンサートでこのような悲劇が起こることはそうそうないことです。

ましてやハイポニーテールで、笑顔を振り舞いてラブソングを歌っているイメージが強いアリアナ・グランデのライブがその標的になったことに対するインパクトもありました。

◆「ワン・ラブ・マンチェスター」を主催

ところが、ここからの彼女の立ち上がる力がすごかった。事件の翌月には中止になったツアーを再開したんですが、それに先立ってあるイベントを開きました。それは「ワン・ラブ・マンチェスター」っていう名称で、マンチェスターと世界数ヶ所を結びオンラインで配信されました。

まるで1980年代のライブエイドのように、いろんなアーティストに「こういうテロ攻撃なんてやめよう。犠牲者ご家族に追悼を示そう」と呼びかけました。当時の彼女は24、5歳だったと思いますが、立派に座長を務めます。

僕もインターネットでその模様を生で見ながら「アリアナすごいな。悲劇を機にひとつ上のステージに上がっている瞬間を今、見てるんだな」と思いました。