鹿児島市立病院で看護師が大量退職した影響で、今月まで一般病床の稼働率を減らす事態に陥ったというニュースを4月にお伝えしました。その市立病院で新人看護師の離職を防ごうと始まった新たな取り組みを取材しました。
鹿児島市立病院で、毎日平日の午前中に開かれているのは、4月に採用された新卒45人、中途採用20人の合わせて65人の看護師を対象にした演習です。
新人の離職を防ごうと、今年度から始まった「チューター制度」で、救命措置など基礎的な技術を指導するのは、3月に退職したばかりの元看護師5人。ベテランが1年間新人に寄り添います。
(指導担当 福島寿美代さん)「いま問題となっていることは、夜勤者がいないこと。新人が夜勤をできれば、夜勤を継続する環境が整う」「新卒の人が離職しないように、精神的な安定を図るために計画した」
市立病院の病床数は574で鹿児島大学病院に次ぐ規模。内科や外科などの診療に加え、救急や周産期医療などを担う県の中核病院の一つです。
ところが昨年度、看護師の退職者数が例年より20人ほど多いおよそ70人に上り、一般の入院病床の稼働率を今月まで最大3割減らさざるを得ない事態に陥りました。近年、時短勤務や育児休業を希望する人が増えるなど働き方が多様化したうえ、介護離職も出る中、若手の離職防止が夜勤体制維持の鍵でした。
人工呼吸器の装着は病棟勤務では年に数件しか機会がない業務なだけに、入念に技術指導します。
「チューター制度」以前は、新人は、1週間の研修のあと現場で働きながら知識や技術を習得していました。しかし、持っていたイメージと看護現場とのギャップから離職するケースも少なくありませんでした。
精神的なサポートにも力を入れていて、うまくできたときは拍手で盛り立てます。
(新人看護師)「技術面を教えてもらうだけでなく、病棟にそれぞれ配属されて精神面でもサポートしてもらい、話すのも楽しいし、気が楽になる」
(中途採用の看護師)「新人の頃の職場は、毎日来たくなかったぐらいだった。厳しい環境、ついてこいみたいな感じだった。(ここでは)誰に助けを求めたらいいかがはっきり分かっているので、病棟で安心感につながっている」
指導のあとも勤務する病棟までついていき、不安を抱えていないか声掛けをします。
(指導担当 福島寿美代さん)「演習終わったけど、何か分からないことあった?」
(新人看護師)「1人でできる自信がない」
(指導担当 福島寿美代さん)「あとで人形持ってくるから、練習した方がいいかもね」
(新人看護師)「(Q.福島さんはどんな存在?)お母さんみたいな存在です」
例年は入って数か月で退職する人もいますが、今年度はまだ1人も辞めていません。
(指導担当 福島寿美代さん)「忙しいときには口調が荒くなったりして、指導を受ける側も不安や緊張感を持つ。このような環境があれば、余裕を持って指導できる。この体制を維持継続していきたい」
若手の離職は、市立病院だけでなく県内共通の課題です。
看護師を辞める人の割合です。2021年度は既卒はほぼ横ばいなのに対して、新卒は大幅に割合が増えました。そもそも看護師自体も足りません。募集人数に対し半分も集まらない状態で、昨年度の求人倍率は2.15倍でした。
看護師不足を補うため求人と求職のマッチングを行う県ナースセンターです。県から委託を受けた県看護協会が、常時およそ400人いる求職者に情報提供していますが、「働き方の多様化」への対応が急務です。
(県ナースセンター 鮫島明子所長)「若い人は子どもや家庭を大事にしたい思いが強い。子どもの迎えに間に合う時間が良いとか、土日はしっかり休みたい。しかし、病院側は土曜も勤務してほしい、夕方や遅い時間のシフトも勤務してほしいと。なかなかうまくマッチングできない現実がある」
潜在看護師を確保するため、国は2015年、離職時に都道府県ナースセンターへ届け出ることを法律で努力義務化しましたが、制度自体を知らない看護師も少なくありません。県看護協会は、「病院側が看護師を受け入れる体制づくりが重要」と話します。
(県看護協会 八田冷子会長)「自分が大事な人材だと考えてもらって、届け出制度に登録してもらうことで、いろんな情報が得られる。離職の理由は結婚や出産、年齢が高くなると介護の問題が上位を占める。職場環境が非常に重要」
私たちの命を守る医療現場が直面している看護師不足。働き方が多様化する中で、模索が続いています。
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