見つかったのは土砂に埋まったズボンとシャツだけ

2019年2月。豪雨から半年以上経っても、信子さんは息子と共に廣明さんを探し続けていました。

10年以上、「満奇洞」の管理人を務めていた廣明さん。信子さんも案内所の食堂に勤め、夫婦で地域の観光を支えてきました。

(室信子さん)
「人情とか情とか、人一倍持っている人で、すごく心配性で朝出ていくときは気を付けて出ていくことと、それから用心するということを必ず言ってくれてましたからね。この裾だけが出てたんですよ。このまま埋まってたらしくて」

川辺に積もった土砂からは、ズボンとシャツだけが見つかりました。

(室信子さん)
「お花やお線香をあげる気にはならないんです。それはしたくない。それをしてしまうといよいよ帰ってこない気がして」

「元気で頑張っているよ」廣明さんを思い続けた5年間

信子さんは行方不明のまま1年が経ったころ、廣明さんの死亡の手続きを行いました。今は毎日欠かさず、廣明さんに花や野菜を供えています。

廣明さんが大切にしていた畑で、信子さんが育てたものです。5年が経とうとする今も、廣明さんを思いながら日々を大切に生きています。

(室信子さん)
「毎日いろんなことがあるたび、珍しいものがあるたび、『きょうはこうだったのよ』『ああだったのよ』『明日はこうなんだ』『今度は孫も元気にしてるからね』っていうことが、毎日の掛け言葉です。」

「そりゃ、いてくれてることが一番です。いないわけだから『毎日皆で元気で過ごしてる』っていうのが、一番主人が祈っていることかなと思ったりして。『元気で頑張っているよ』っていうのが報告みたいなものですね。報告がてら元気で過ごすっていうのが、もうそれが主人への伝えたい一番の気持ちですよね」