前検事総長の林真琴氏や精神科医などで構成する、故・ジャニー喜多川氏の性加害疑惑を調査する、外部専門家による再発防止特別チームが6月12日に記者会見を開いた。この日を境に、新聞やテレビの報道番組が「ジャニーズ性加害問題」に切り込んでいる。同月26日に、RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演した音楽プロデューサー・松尾潔さんは、メディアの姿勢の変化を評価しつつ、改めて「膿を出そう」と提言した。
◆ジャニーズの再発防止特別チームが会見
ジャニーズ性加害問題について、前回この番組でコメントしたのが5月22日ですから、ほぼひと月経ちました。その間の動きも含めて、関わりがある業界に身を置く私の視点から、改めてお話します。
なぜ今なのかというと、6月12日にジャニーズの再発防止特別チームが記者会見を開きました。出席したのは元検事総長と精神科医の二人でした。もちろん、このチームが発足した意義を感じましたし、会見が開かれたことは前進だと思います。
◆チームはジャニーズのコントロール下?
ただ、ポイントをうまくかわされたかなという気はします。この会見、5月に発表された、藤島ジュリー景子社長の謝罪動画や文書では不十分ではないかという、世の中の声に応えるために開かれたという側面があると思います。
しかしこの会見に藤島ジュリー社長は、出席していません。また、座長の林元検事総長はこう述べています。
“「(第三者委員会という名前ではないが)私たちは第三者委員会であると受け取ってもらっても差し支えない」”
「なんだろうな、この言い方は?」って思います。独立性の高い第三者委員会だと言っているようで、「実はジャニーズのコントロール下に置かれたチームである」ということも物語っているわけですね。
林氏の言葉をそのまま引用するならば、「ジャニーズ事務所が設置したものなので(報酬も事務所から)いただく」と。そして調査結果をいつ、どんな形で公表するかについても、ジャニーズ事務所にイニシアティブ(主導)があるということです。
そういうところが問題ではないのでしょうか? そして、なぜ社長が同席しないのでしょうか? 企業ガバナンスとして、社会的に影響の大きい組織であれば、当然やっていることでしょう。
◆ジャニーズ事務所の本業は順調
一方で、ジャニーズ事務所の本業の方は順調のようで、この土日に福岡PayPayドームで開かれたSnow Manの4大ドームツアーも大成功だったと聞いています。そういう状況だからなおさら「性加害問題のことも、一応、やっていますよ」という印象を与えてしまうような会見だったと思います。そういう見方をしているのは、僕一人ではないでしょう。