テニスの錦織圭(33)が1年8か月ぶりの実戦復帰となったATPチャレンジャー カリビアン・オープンで優勝を果たした。
2022年1月に股関節を手術。その後、右足首を痛めて長期離脱を余儀なくされ、最高4位だった世界ランクは圏外に。懸命なリハビリを経て勝ち取った復帰大会優勝だった。リハビリ生活を送るなか、錦織は、次世代の育成にも取り組んできた。昨年12月には、所属するユニクロのグローバルブランドアンバサダーとして日本の将来を担うジュニア選手たちと交流。錦織が次世代の育成に力を注ぐ理由を聞いた。
石井大裕アナウンサー:
次世代の育成ということで、結構みっちりやられましたね。
錦織選手:
そうですね、合計4、5時間くらいは一緒にやらせてもらって良かったと思います。結構人数もたくさんいたので、なかなか短時間で難しいところはありましたけど。こうやってジュニアのトップの選手たちの姿を見ることもできたし、女子の選手はなかなか見ることも少なかったので、それも経験させてもらって、僕は良かったです。

石井:
すごく楽しそうにやっているなと感じましたが、いかがでしたか、教えるということに対して。
錦織:
そうですね、なるべく意見を押し付けすぎないようにと。やっぱり楽しんでテニスをやってもらいたいし、なるべく褒めることを忘れずに、まだまだ指導としては経験はゼロなので。去年くらいからはちょっと時間もあって、トップジュニアの選手たちと交わる機会は結構多かったんですけど、今回わざわざアメリカに来て、こうやって子どもたちもいろんな経験ができて、トッププロを見れたり、外国人の選手と練習できたりっていう場を設けてユニクロさんを通じてできたのは、すごくいい経験になったんじゃないかなと思います。
石井:
自分自身のなかで、この2日間教えるにあたって、テーマじゃないですけど「これだけは伝えたい」ということはあったりしたんですか?
錦織:
短時間の中で何かを変えるということはすごく難しいし、そこまで僕が責任を負えるかというところもあるし、でも、明らかにちょっと違うなというところはあったりするので。なんか彼らの中で変わってほしいなっていうところも僕の中ではあって、ちょっと微妙な葛藤というか、変えすぎないけど、ちょっと良いポイントを言いたい、みたいなところはありました。
石井:
指導を見てて思ったのが、いろいろ伝えた後に「でもこれやっぱり練習しないとね」って最後に付け加えるように言っていたんですよね。そこの部分ってすごく大事、継続していく、だったりとか。
錦織:本当にそうですね。
石井:
その思いっていうのは、ご自身の経験からそういうのって出てきてるんですよね?
錦織:
今でも僕もそうですけど、今までの癖とか、経験もなかなか一日で変えることはできないので、やっぱこう反復練習して、同じ練習を継続して、同じメンタリティーを継続してやっていかないと、確実に上手くはなれない。今日行ったことを持ち帰って、しっかり継続して練習してもらいたいなという気持ちは常にありましたね、教えているときも。
石井:
錦織選手は今まで、自分のプレーを見せて、みんなにいろんなことを感じてもらって、「錦織圭選手ができたのだから、自分もできるかも」っていう子どもたちもたくさん生まれてきたと思うんですけども。いかがですか、その感触というのは、今まで現役生活ずっとやられてて。
錦織:
でも、それが一番なんじゃないかなと思います。一番の近道というか、他にトップジュニア、僕に続く選手が出てくる一番の近道って。自分が道を示してあげないといけないし、僕が少しでも長くトップ10にいることによって、もっといろんな選手が「じゃあ僕もできるぞ」って。同じ日本人だったら思ってもらえるきっかけにはなってもらえると思うので、そういうのが自分のモチベーションだったりしますね。僕の後にも、西岡(良仁)選手だったり杉田(祐一)選手が50以内に入ったりできてきているので、そういう連鎖は必ずあると思うので、もう一回僕も頑張って、またトップに戻りたいなという気持ちはありますね。