2016年に軽井沢町で、大学生など15人が死亡した、スキーツアーバスの転落事故で、事故の責任を問われたバスの運行会社の社長と当時の運行管理者の裁判は、きょう8日に判決が下されます。

事故を防ぐことはできなかったのか、専門家の意見も交え、裁判の争点をまとめました。

2016年1月15日、軽井沢町の国道18号碓氷(うすい)バイパスで、東京から県内のスキー場に向かっていたツアーバスが、道路脇に転落。

大学生など15人が死亡、26人が重軽傷を負いました。

バスは制限速度の制限速度の2倍近い時速96キロで走行。

死亡した運転手がブレーキを踏まないままカーブに突っ込み、転落したと見られています。

検察は、事故の責任を問い、運行会社「イーエスピー」の社長・高橋美作(たかはし・みさく)被告61歳と、当時の運行管理者・荒井強(つよし)被告54歳を、業務上過失致死傷の罪で起訴。

裁判は2021年10月から裁判が始まりました。

裁判で2人の被告は「事故は予想できなかった」と無罪を主張。

一方、検察側は、運転手が大型バスの運転に慣れていないと知りながら、適切な措置を怠ったなどとして、禁固5年を求刑しました。

交通事件に詳しい元検事の飽津史隆(あくつ・ふみたか)弁護士は、2人に過失があるかどうかが、主な争点だと話します。

(飽津史隆弁護士)
「バス事業者の経営陣が業務上過失致死傷罪を問われた事例が過去にない。その点で安全管理をどう考えるのかがなかなか難しい」

「過失」の有無を判断するポイントの一つが、「事故を予見できたかどうか」です。

検察側は、死亡した運転手は採用面接の際に大型バスの運転が苦手であることを伝えていたと主張。

乗務員の点呼や適正診断が適切に行われないなど、ずさんな運行管理が常態化していたと指摘しています。

(飽津史隆弁護士)
「さらに、実地の訓練に出させたときに脱輪しそうになったとかがあって、運転が不慣れな状態から習熟させるための訓練をきちんと経営陣がさせていないまま、漫然と運転業務につかせたという事実は揺るがないと思う」

そして、もう一つのポイントが、事故を回避するための適切な安全管理を2人が怠っていたかどうかです。

(飽津史隆弁護士)
「今回特に注目したのが、事故の前に国交省の監査を受けて不備を相当指摘されている。直すのかと思ったら直さないで虚偽報告しているという点。きちんと法令に従って業務を遂行していくという姿勢が欠けていたということになれば、それはおそらく『過失あり』という方向に傾いていくのではないか」

一方、弁護側は、「運転手の技量は未熟ではなく、ブレーキを踏むという基本的な操作を行わないことまでは予見できなかった」などと主張しています。

また、2人の被告が事故を予見でき、安全管理を怠っていたとしても、そのことと事故との間に因果関係が認められなければ、2人は刑事責任を問われません。

(飽津史隆弁護士)
「直接の行為者ではありませんから、安全管理を怠ったという監督責任と人が亡くなったという結果との間が非常に遠い関係にあります。この因果関係の立証が非常に難しい。安全管理を怠ったから人が亡くなったんだ、事故が起きたんだという立証を検察がきちんとできたのか。そこが今回の裁判のポイントになるのだろうと思います」

14回に渡って公判が行われ、2022年12月に結審した、今回の裁判。

判決は、きょう8日の午後2時から長野地方裁判所で言い渡されます。