建設から50年以上が過ぎ、老朽化が進む東京の首都高速道路。中でも1200か所以上のき裂が見つかっている「大師橋」の架け替え工事が始まりました。300メートルの巨大な橋を撤去して新設するという大規模工事にもかかわらず、通行止めの期間はわずか2週間。短期間で終わらせるために使われた特殊な工法とは?一方で、高度成長期に作られた全国の橋やトンネルには補修が必要とされているにもかかわらず、未だ手つかずの場所がこんなに…。高速道路の無料化にも大きな影響を及ぼすことになったインフラ劣化の実態とは?手作り解説でお伝えします。

老朽化が進む首都高速

都高速道路が開通したのは、東京オリンピックを2年後に控えた1962年。その後、次々と延長されて今は330キロ近くになります。このうち赤い部分は“コンクリートの橋の寿命”とされる50年を超えていて、全体の3割に及びます。黄色は30年以上経過したところで、合わせると7割近くにもなります。

今回、架け替え工事を行っている大師橋は、1968年に開通して50年以上経過。その交通量は1日8万台に及びます。これまで1200か所以上のき裂が見つかっていて、長期的な安全性を確保するために、橋の架け替えが行われました。

古い橋と新しい橋を丸ごと交換

架け替える首都高の大師橋は、約300メートルで、4000トン。東京タワーの高さ・重さとちょうど同じ規模です。

通行止めの期間をできるだけ短くするために、隣のスペースで新しい橋を作る方法が選ばれました。まず、古い橋のそばに新しい橋脚を作り、橋を一時的に受け止める仮の台も設置しました。新しい橋は3つに分けて作られました。2つは、東京の有明と横浜から船で運び、3つ目は船が着けられないため、現場で組み立てました。船で運んでから橋の形にするだけでも1年以上かかったと言います。

そして、ほぼ完成状態になったら、古い橋をスライドさせて移動し、新しい橋を架けたのです。橋はワイヤーで引っ張って動かしましたが、重すぎるため、ステンレスの板の上をすべらせて移動させたと言います。