◆少子化対策ならば「結婚できない若者」支援を

さらに厳しい現実を言えば、扶養控除の撤廃がほとんど影響しないような収入だと、子どもどころか、それ以前に結婚すら諦める人が少なくありません。これについては、毎日新聞デジタルに示唆に富む記事がありますので、ご紹介します。「少子化対策ならば『子ども支援』より『結婚できない若者』支援」――というタイトルで、家族社会学が専門の、筒井淳也・立命館大学教授が問題提起しています。

筒井教授は「少子化のもっとも大きな要因は未婚化・晩婚化だ」として、こう言います。

“(若者の)未婚化は、わかりやすく言えば、(生活の安定した)選ばれた人しか結婚できなくなっているということです。結婚できなくて困っている人からおカネを集めて、結婚できている人に渡すようなことをしても、出生率は回復しません。”

そのうえで、政治に、こう苦言を呈します。

“児童手当の拡充などは、財源問題がクリアできればすぐにできるし、効果があるかないかにかかわらず、政治家にとって実績になります。しかし、雇用の安定のような政策は、総合的、持続的にやって5年後、10年後に成果がでるものです。政治家にとってはアピールしにくいのかもしれませんが、政治家には世論の支持がなくても必要な政策をやる責任があります。”

その通りだと思います。

◆解散する前に与党も野党も財源案を示せ

最後に改めて財源問題です。消費増税は行わない、としていますが、一方で「企業を含め広く負担する『支援金制度』の構築」に言及していて、これは社会保険料の増額=総額およそ1兆円程度と見込まれています。

保険料は所得に応じて計算されますから、もし扶養控除も廃止と重なれば、児童手当より負担のほうが大きくなる世帯はさらに増えます。また会社員の場合、保険料の半額は企業負担なので、「賃上げ気運に水を差す」と経済団体は反対しています。

さらに、「安定的な財源」は5年後の2028年までに確保する、としていて、それまで不足分は「こども特例公債」=つまり借金で賄う方針です。一方で、財政制度等審議会は、少子化対策の財源を「これから生まれる子どもたちの世代に先送りすることは本末転倒だ」と、くぎを刺していて、整合性はとれていません。

耳当たりのいい「歳出削減」にしても、大きいのは社会保障費ですから、医療や介護など暮らしに直結する分野がどう変わるのか、内容次第では将来不安が増して少子化を加速させるおそれすらあります。

もし解散するなら、こうしたことを明確にして信を問うべきで、もちろん野党も現実的な対案を示す必要があります。ということは、解散は、財源が明らかになる年末より後のはずですが…皆さんもぜひ、そこは注視してください。