株価3万2000円の可能性も「山高ければ谷深し」。リバランスとはリスクコントロール
――今後の動きはどうでしょうか。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
6月中ぐらいに3万2000円まで行く現実味が出てきました。実は4月、5月の株価が上がっている間に、空売りをした投資家もたくさんいるのです。空売りは株価が下がると儲かるという取引で、空売りしている投資家はいま含み損の状態です。更に株が上がるとなるとその空売りしている投資家も諦めて損失覚悟で買い戻しをする。これを踏み上げ相場と言うのですが、そういうことがもし起きると、一気に3万2000円に上がっていく可能性が出てきています。
――ただ、最安値に2万6000円とありますが。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
5月中もしくは6月ぐらいまではいいとしても、半年後は状況が一変して2万6000円ぐらいまで、10%から15%ぐらいの下落の余地があると思っています。理由は海外の景気減速です。アメリカの景気は今のところ何とか持ちこたえていますが、金利も高い状態が続くとなると消費がもう少し落ち込んでいくはずです。アメリカの経済統計を見ても小売売上高とか、消費関連はもう陰りが出始めていますので、アメリカの景気が減速度を強めていく。そのときアメリカの長期金利が下がりますよね。となると為替はどうなりますか。
――為替は円高に進んでいきますね。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
(アメリカの長期金利が下がると)円高がセットでついてきます。景気が悪くなってアメリカ株が下がる。さらに円高が日本株には逆風になりますから、10%から15%ぐらいの下落は考えておいた方がいいと言っています。
――売るタイミングが難しいと思うのですが。それを含めた相場の格言があります。「山高ければ谷深し」。どういうことでしょうか?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
株式市場は上がったり下がったりします。大きく上がれば、その後大きく下がることが多くありますし、逆に大きく下がった後は大きく上がると。短期の投資家なら山の上げ下げを丁寧に拾っていく。それがトレーディング手法になるわけですが、一方で長期の20年、30年かけて資産形成する人は、今は売るべきかどうかを検討してほしいのです。自分の資産の構成を、例えば日本株と海外株半分半分でスタートしたとすると、日本株だけが上がったので日本株のウエートが増えたと。日本株の配分が多くなっているということは、当初想定していたよりも日本株のリスクを過大に取っていることと同じ意味です。この時に日本株を売って海外株に回して元に戻すのがリバランスです。リバランスとはリスクをコントロールするのが目的です。必ず売れという意味ではありません。儲けを増やすことではなくてリスクをコントロールするために、これをやるべきかどうか資産の構成をチェックしてみてください。
――長期的な資産形成をするなら、リバランスが大事ということですね。ということは、これまで売ったことがないけど、ちょっと売ってみる勇気を持って。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
今勇気と言ったでしょう。今みたいに株価が上がっているときに、しかも私の話を信じてくださるのなら、目先3万2000円まで行くかもとかいう話をした直後に売るのはすごく勇気が要ると。
――あと1000円上がるならもうちょっと待ちたいと思いますから。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
人間ですから、必ず欲が出ます。でも、長期の資産形成においては当初決めたルールをきちんと守って、感情に流されずに機械的に淡々と運営していった方が結果的にうまくいくことが多いのです。一度チェックしてみてください。