政府が掲げる資産所得倍増プラン。でも実際のところどうやってお金を増やすのか、投資のプロに聞いてみた。

株高の背景に「バフェット効果」「PBR改善要請」など

――日経平均株価がバブル後最高値を更新しました。33年ぶりの最高値、予想されていましたか。

ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏:
予想できていませんでした。「Bizスクエア」のお正月特番のときも僕は今年の最高値は2万9000円と予想していたのです。3万1000円なんてとても予想していなかったのでびっくりです。

――投資家の皆さんの中にもなぜこんなに上がるのかと意外に思っている方もいると思うのですが。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
今回の株高は何か一つこれという決定打があったわけでなはないのです。いろいろな要因が重なって、日本株がどんどん買われてきたと。

――世界的に見ると、金融引き締め局面ですし、アメリカでも景気後退が不安視されています。その中でなぜ日本株はここまで急上昇しているのですか。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
まず直接的に言えば、海外投資家が日本株を再評価したということです。3月までは海外の投資家はずっと売り越しだったのですが、4月に入った途端に急に日本株を買い越しし始めて、5月19日までで8週連続の買い越しと、金額にして3.6兆円も買い越ししてくれたのです。これで日経平均が一気に3万円、3万1000円回復となっているわけです。背景はいくつかあります。

まず、欧米と比べた優位性ですね。政策金利ですが、アメリカはここ1年で5%金利を上げ、欧州もECB(欧州中央銀行)がまだまだ利上げすることを示唆しています。日本は良くも悪くもずっと地面を這いつくばって、さらに植田和男総裁はまだしばらくは緩和を続ける構えを示していますので、海外投資家にとっては日本株の方が安心なのです。

日本はコロナを5類に下げたばかりで、これからは消費も活発になるし、経済が盛り上がっていくのではないか。海外と比べて日本の方がいいのではないかというわけです。消費だけではなく、企業業績も今期の見通しは、会社側が発表した数字が心配されたほど悪くなかったのです。これも安心感につながったと思います。

もう一つ、日本株への期待を端的に表している有名な投資家、ウォーレン・バフェット氏が日本の総合商社5社の株を何年か前から保有していますが、その株の買い増しをすると。商社以外にも、前々から目をつけている日本の会社がいくつもあると言ったので、これが響いたのです。

さらに、東京証券取引所が3月末にPBR1倍割れの改善要請、つまり上場企業に対して株価がもっと高くなるように努力をしてください、その計画をきちんと公表してくださいということを要請しました。PBR(株価純資産倍率)は「株価÷1株当たりの純資産」。純資産は帳簿上の簿価で、簿価に対して株価が何倍になっているかという指標です。一般に1倍割れているような会社は上場失格とされています。簿価より株価が低いのなら、その会社の株を全部買い占めて会社を清算する方が儲かるということで、その会社は今のビジネスを続けている意味はないという話になります。

――日本の大手企業はかなりの数が1倍割れと聞きました。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
ざっくりと半分ぐらいが1倍割れです。東証が正式に要請する前から動き出した会社もいくつもあります。自社株買いをしたり配当を増やしたり、PBR1倍を目標にするとはっきり中期経営計画に書く企業が出てきたり。これも海外の投資家には結構響いています。