田中希実(23、New Balance)が昨年とは違ったプロセスで世界に挑戦する。陸上競技の第107回日本選手権が6月1~4日、大阪市ヤンマースタジアム長居で行われる。
21年の東京五輪で日本人初の女子1500m入賞(8位)を達成した田中は、昨年は800m、1500m、5000mの3種目で世界陸上に挑戦した。日本選手権は強行スケジュールを克服し、800m2位、1500mと5000mで優勝という結果を残した。
しかし今年は1500m(6月1日予選、2日決勝)と5000m(6月4日)に種目を絞った。1500mは4分03秒50、5000mは14分57秒00の世界陸上ブダペスト参加標準記録を突破し、3位以内に入れば代表に内定する。
フラッグスタッフと御嶽で取り戻した練習の自信
ゴールデングランプリ(以下GGP。5月21日)の1500mで、田中は残り1周手前から猛スパートをかけ、4分11秒56で優勝した。ラスト1周を60秒56と自身過去最速レベルのスピードで駆け抜け、外国勢4選手に快勝。「ラスト100mで脚が止まった」と納得はしていなかったが、安堵の表情も見せていた。
「今まではレースの流れに乗るだけでいいと思っていましたが、自分から動かす、勝ちに行くレース展開が海外で戦っていくには必須になります。それを(4~5月の米国2レースで)痛感させられて帰ってきたので、GGPは自分からレースを動かすと決めていました。そこはしっかりできましたね」
米国での2試合の間に、短期間ではあったがニューバランス・チームと一緒にコロラド州フラッグスタッフで高地トレーニングを行った。帰国後も岐阜県御嶽で高地トレーニングを続けてきた。
「フラッグスタッフあたりから合格点の練習を積めてきて、ここで勝てなかったら勝てない、くらいの気持ちで臨むことができたんです。それをしっかり表現できたのはよかったです」
父親である田中健智コーチによれば練習に、入賞した東京五輪前と同じ雰囲気が感じられ始めたという。GGP後も御嶽で、日本選手権までトレーニングを積む。
日本選手権に向けての抱負を、田中は次のように話した。
「GGPのラスト100mで脚が止まった部分、勝ち切る部分を意識して日本選手権に臨みます。(今シーズン初めて)5000mもあるので、1500mの練習だけでなく、5000mの練習にも入っていきます。それによって、1500mの自信も高めていきたい」
1500mは田中が体調を崩すなどしなければ優勝が濃厚だが、5000mは廣中璃梨佳(22、JP日本郵政グループ)、五島莉乃(25、資生堂)、木村友香(28、同)ら日本代表経験選手に加え、加世田梨花(24、ダイハツ)、山本有真(23、積水化学)らが15分前後のハイペースに挑んでくる。

















