新型コロナの5類移行から約2週間。移行によって感染対策も個人や事業者の判断に委ねられていますが、いまコロナ禍で大量に使用されたアクリル板が新たな悩みの種になっているんです。

きのう(22日)、両備グループの営業所で従業員が、バスの車内で飛沫感染を防ぐパーティションを外していきました。

新型コロナの5類移行後も感染状況は落ち着いているため、今月中に約240台のバスがコロナ禍前の姿に戻ります。

(岡山電気軌道 営業課 脇本克樹さん)「特に感染者が大きく増える傾向も無かったので、お客様にも安心してご利用いただける環境ができてきたのかなと」

徐々に元の姿に戻りつつある日常…しかし、新たな問題も。

(くしあげ飯房ごんご 井本隆章さん)「Q.このアクリル板はもう使っていない」「A.ずっと今はこちらに置いております」

「捨てるわけにもいかないし」

店内の片隅にひっそりと置かれた12枚のアクリル板。

岡山市北区の飲食店では、コロナ禍に約3万円で購入したアクリル板の取り扱いに困っています。いつ感染の波があるか分からないため「処分もできない」うえに、飛沫が飛んだアクリル板は産業廃棄物となるため処理をするにも料金が発生するのです。

(くしあげ飯房ごんご 井本隆章さん)「自分の中で5類になったからすぐ処分しようとは思っていなかった。でも処分にお金がかかるのは本当に大変なこと。お金を出して買い求めて。また処理するにもお金がかかる」

(スタジオ)不要となったアクリル板は産業廃棄物の廃プラスチックに該当し、回収費用もかかるんです。岡山県によりますとアクリル板を同じ用途でリサイクルできる環境省認定の事業者は国内で1社のみなんです。岡山市にあるプラスチックの加工会社でも再利用の方法も探っていますが、実はさまざまな難しさがあるといいます。

岡山市北区にある入船プラスチック工業です。

長年、アクリルなどの加工に携わってきた入船社長は、コロナ禍に生産されたアクリル板を再資源化するハードルの高さを指摘します。

(入船プラスチック工業 入船佳樹社長)「一般的に見るとほとんどわからないんですけど小口(材料の断面)から見ていくとですね、やはり透過率が良くないだろうと、やはり横から見たときのその美しさとか、そういうものをお客さんは気にされる。我々としては使いづらいなと」

新品のプラスチックと再資源化したプラスチック。2枚を重ねてみると…リサイクル品は緑がかっているのが分かります。

廃棄されたアクリル板は、細かく砕き、同じパーティションのほか、プラスチック製の本立てや道路の表示板への活用が見込まれていますが、現時点では品質面で課題が残るといいます。

(入船プラスチック工業 入船佳樹社長)「わざわざ再生品であるということをうたった上で売っていた場合に量が捌けるのだろうか。それだけの集めてきた量を捌くことは難しいんじゃないだろうかというふうに思います」

またパーティションで使われるプラスチックはアクリルやポリカーボネートなど主に約9種類。回収時に素材が混じると品質が悪化するといいます。「分別」という課題です。

(入船佳樹社長)「分別するにも手間がかかるだろうな。ここを乗り越えないと再利用っていうのは難しいと思います。

回収業者さん、この人たちもやはり問題意識を持って、国、県、そういう地方公共団体と、行政と一緒になって、そういう分別回収を進めていくということが一つ大事なことだろうと思います」

岡山県でも適切な分別による有効活用を求めていますが、民間のみでは難しく、国や企業が一体となって大量廃棄の恐れがあるアクリル板のガイドラインを、早急に策定する必要がありそうです。