「ただいま!」日々当たり前のように聞いていたこの一言を、今は聞くことができなくなった女性がいます。12年前、飲酒運転の車に16歳の長男を奪われた母の、社会への願いを取材しました。

2011年5月2日。広島市で、自転車に乗っていた高校生が、飲酒運転の車にはねられ、死亡しました。亡くなったのは、当時16歳だった、三浦伊織さん。自転車競技部に所属していて、大好きな自転車で帰宅している時でした。

「もっともっと…生きたかったよね。」

伊織さんの母、由美子さんが記したエッセイです。

――三浦由美子さんのエッセイより
『今年は絶対入賞するよ』
 はにかみながら言ったのは、父が初めて自転車レースを観戦した日。未来も伊織もとても眩しく輝いて見えた。

 入賞できなくても生きていてくれるだけで充分だったのに…

 危険運転致死罪が認められても、伊織の笑顔も、大好きな自転車に乗り続ける筈だった未来も戻ってはこない。

 もっともっと…生きたかったよね。
 何もしてあげられなくてごめんね。