高い高齢化率で30年後の日本の姿と言われている地域が岡山にあります。倉敷市の下津井地区です。人口減少が進んでいますが、その一方で少しずつ増え始めているのが移住者です。魅力の一つとなっているのは古民家が並ぶ風景に象徴される街の「温もり」です。下津井地区の古民家を「お試し」で貸し出し、移住を促進しようという取り組みも始まりました。

(正田順也さん)「築150年ぐらいになるんですけれども、江戸時代から明治初期に建てられた古民家になります」

倉敷市で工務店を経営しながら、全国古民家再生協会・岡山支部の代表も務める正田順也さんです。日本の住文化である古民家を後世に残したいと、下津井地区の古民家の再生に取り組んでいます。

(正田順也さん)「けやきの大黒柱、今ではこういう風な柱はなかなか使わないんですけど、柱を活かしたような造り、あと土壁があったりとか、大引天井があったりとか、宿泊施設とか飲食店とか様々な施設に利用ができるかなと考えています。一言で言うと地域の宝だと」

瀬戸大橋のたもとに位置する倉敷市下津井地区。かつて大阪と北海道とを結ぶ「北前船」の寄港地としても栄えた港町です。

約60年前の映像には路地を行き交う多くの

人々の姿が残っています。しかし…

(70代・下津井で生まれ育った住人)「昔は(この上の住宅地に家が)60軒ぐらいあった。今は18軒ぐらい。もう70歳は若手。80代になる人が多い。若い人がもっときてにぎやかになったらいいんですけどね」

下津井地区の人口は右肩下がり。高齢化率は44・3%まで進み、岡山県内でもかなり高い地域です。そのため、住む人がいなくなり管理が行き届いていない空き家が約30%を占めるといいます。そんな静まり返る街に5年前、東京から移住してきた男性がいます。

オリジナルジーンズを作りたいとやって来た福川太郎さんです。店舗を探していたとき正田さんから古民家の紹介を受け、改装して店舗兼住宅にすることを決めました。

(ダンジョデニム・福川太郎さん)「ここ、ジージャンが並んでいるんですけど、なんとなくジージャンのビンテージ感が建物の雰囲気とマッチして、店舗として活用するにもちょうどよかったのかなと思います」

長年、住人の暮らしとともにあった建物だからこそもたらされる温もり。この景観・建物といった街のぬくもりには人を引きつける力があるはずだと福川さんは感じています。

(ダンジョデニム・福川太郎さん)「景色がいいというのはもちろん、移住者がぽつぽつ来始めているいるので、そういう意味でチームワークもこれから出てくるのではないかと思います」

古民家に興味を持ってもらい移住者を増やしたい。そこで正田さんが所属する町おこし団体が倉敷市の委託を受け3月に始めたのが「下津井シービレッジハウス」です。県外からの移住希望者が最大2週間、一泊1000円で宿泊できる「お試し住宅」。築100年の豆腐屋を改装し「古民家」や「下津井」での暮らしを体験できるもので、2か月先までほぼ満室だといいます。

(正田順也さん)「何もしないと、このまま人口は増えずに減っていくんですけれど、地域の私たちが町おこしをして観光振興しながら、それを目指してチャンスがあると、若い人たちが移ってくることで活性化してくるのではないかなと思ったりしますね」「眠ったままの古民家が下津井に再び人を呼び戻す資源に」

正田さんは新たな可能性を感じています。

(正田順也さん)「古民家を活用しながら若い人たちが入ってきて、地元に住んでる人たち、おじいちゃんおばあちゃん含めて皆が調和するような街をぜひ作っていきたいですね」

古き良き時代の風情が残る下津井地区。人々が生きてきた証=古民家が新たな未来をつくるのかもしれません。