成田空港は2023年3月、ターミナルを一つに集約するなど、新しい成田空港構想の中間取りまとめを発表した。滑走路やターミナルの拡充は、成田空港の機能強化にどうつながるのか、成田国際空港会社の田村明比古社長に話を聞いた。

1ターミナル化はアライアンス連合の垣根を超えたニーズに対応。商業系の収入増が課題

2023年5月20日、成田空港は開港45年を迎える。3月の総旅客数は267万人とコロナ前の7割まで回復した。インバウンドに限っては8割を回復し、活気を取り戻している。

――人の往来が戻ってくるというのはいいものだ。

成田国際空港 田村明比古社長:
本当に一番ひどいときはコロナ前のマイナス98%というところまで需要が落ちて、ターミナルに人っ子一人いないような時間帯も結構ありました。やはり空港というのはお客様にいていただいてなんぼの世界だなというのを改めて実感します。

――インバウンドがかなり戻って空港内で買い物する姿は以前と同じように戻ってきているか。
成田国際空港 田村明比古社長:

長いこと3年間ぐらい、世界のお客様ももうずっと押さえつけられてきたものがあるので、消費をしようというマインドは強めに出ている感じがします。1人の消費単価が上がったりしています。

成田空港には現在、飲食、物販、免税店などが合わせて232店舗ある。成田空港で最大の免税店は売り場面積約1290㎡。食品や民芸品など5000点が店頭に並ぶ。コロナ禍の2021年12月、売り場を1.5倍に拡張してリニューアルオープンしていた。

NAAリテイリング 店舗開発課 遠山貴弘課長:
コロナ禍を準備の期間と捉え、いつか多くの顧客が来てくれる日のための準備をしようと。そういう意味でも店舗を新しく拡張しました。

――成田空港はインバウンドに強い空港でもあるので、非航空事業で稼ぐということは意味がある。
成田国際空港 田村明比古社長:

着陸料を中心とする航空系の収入は、特に国際間で空港間競争が非常に激しいのです。そこを上げていく余地は結構限られる。そういう意味で商業系の収入を上げていくというのはどこの空港会社も大事だと思っていますし、それが課題になっているということだと思います。

成田国際空港会社は2023年3月、B滑走路を1000m延ばすことや、3500mあるC滑走路の新設など、現在三つあるターミナルを一つにまとめた1ターミナル化の具体的な構想を明らかにした。滑走路の整備は2029年3月末を目指して進められている。

――どれくらいの予算がかかるのか。
成田国際空港 田村明比古社長:

今申し上げられる金額というものはないのですが、そんなに安いものではありません。

――B滑走路を延長して、C滑走路を新しく作る。滑走路はそこまで必要なのか。
成田国際空港 田村明比古社長:

本当に大事なのは1時間あたりに何便扱えるかというところです。特定の時間帯に需要が集中しがちです。その需要を受け止めようとすると、今でも特定の時間帯においては、キャパシティが足りないということがあります。

――今三つあるターミナルを集約して1ターミナルにする。狙いは何か。
成田国際空港 田村明比古社長:

かつては大きなアライアンス、航空の連合の中だけで乗り換えていたものが、連合の枠を超えて別のエアラインに乗り換えるニーズが結構出てきたわけです。アライアンス連合の中で乗り換えているだけなら、別々のターミナルでもターミナルごとに連合を集中させてしまえば良かったのですが、垣根を越えたとなると、同じターミナルのほうが乗り換えが便利になるわけです。

――ターミナルが巨大になって移動距離がやたら長くなるというのは海外で経験がある。
成田国際空港 田村明比古社長:

そのデメリットをなるべく生じさせないためにいくつか考えることがあります。例えば今はかなり広大なチェックインカウンターの列がロビーに展開していますが、将来的にはDXが進んで、ロビーでチェックインをしなくても済むようになってくる。ということは、広いロビーは必要なくなってくるかもしれない。全体をコンパクトに抑える工夫をしていくということが一つあります。