トヨタの強気予想は東証のPBR改善要請が影響。IT不況は最終局面か

――いろいろなものが再開した反面、今まで巣ごもりで潤っていたところにも反動もあった。

りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一氏:
経済の再開でいくと、やはりコロナが明けた影響は大きく、インバウンドも一緒に来たので、ここのプラス要因は非製造業の企業収益を大変大きく持ち上げたと思います。ところが、その裏側では、巣ごもりの間に売れたパソコン、スマホ、IT関係のものはもう全然売れなくなったのです。IT関係の不況が来たので、ここはかなり厳しい状況になっています。

――インフレになってきて、値上げができた企業と、逆にコスト高に苦しむ企業が分かれた。

りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一氏:
「値上げ力」という言葉があって、消費者に受け入れられる値上げができるかどうかです。値上げをしても消費者が受け入れるところは、売上が増えて利益も増えます。それがないと原材料はどこも上がっていますから、それを転嫁できずに苦しくて減益という形で、結構明暗が分かれています。

――省力化ができたところと、人手不足でオペレーションができなくなっているところがある。

りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一氏:
街中でも最近、スーパーに行ったらセルフレジ、外食に行ったら配膳ロボット、中にはスパゲティを作る機械などを見せているところがあります。人が減るので、人件費を上げても利益が出る。そういうところは省力化をして、非常にうまくやっています。それができないところは、賃上げがないことで人が辞める場合があるのです。

――トヨタの2024年3月期予想は、営業利益は初の3兆円台で強気だ。

りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一氏:
今まで日本では予想の数字は結構慎重な会社が多かったのですが、今東京証券取引所が、株価純資産倍率(PBR)が1以下の会社に対して改善を要請しているのです。

――PBRが1倍というのは、資産を全部売り払って会社を清算して、株主にお金を返した方が、続けるよりも得になるという数字で、本来、資本主義では起こり得ない。

りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一氏:
海外では許されなくて、そんなことをやっていたら普通は経営者としてクビになってしまうというぐらいの数字です。トヨタも日本を代表する大企業もほとんど1以下です。これを改善しろというのが出ていて、慎重な見通しを出すというのはますますPBRを下げるので、トヨタの予想は少し楽観的と言ってもいいかもしれません。

日・米・韓・台の半導体電子デバイスの鉱工業生産指数を見ると、周期的にシリコンサイクル(半導体業界特有の景気循環)を繰り返している。

りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一氏:
マイナス領域に突っ込んでいっているのは、パソコン、スマホが売れなくなって、半導体を使わないので、半導体の価格が下がると同時に生産数量も下がっているということを示しています。

東京エレクトロンという半導体製造装置メーカーの決算が出た。

――今期はすごく良かった。同社は24年3月期は売り上げも利益も大きく減らすと見ている。

りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一氏:
IT関係は順番があって、まずITの商品が売れなくなる。そうすると半導体の価格が下がる。半導体を作る数量が減る。半導体を作っている会社が減益になる。設備投資をやめる。設備投資をやめるイコール半導体製造装置を作っている会社の売り上げが減る。川上から流れて最後まで来たということです。

――ここが悪くなるということは、いよいよ最終局面かもしれない。

りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一氏:
この数字からその期待が強まってきたということです。

2024年3月期の見通しは現在開示されている754社のうち6割にあたる446社が増益と見込んでいる。減益と見込んだのが264社だ。

これだけ強い見通しを出している中で、今期アメリカ経済の減速などを乗り越えてやっていけるかが今年の焦点だ。

(BS-TBS「Bizスクエア」5月13日放送より)