2023年3月期の決算発表がピークを迎えた。円安や資源高などが影響し、明暗が分かれる決算となった。

過去最高売上の一方で、コロナや資源高の影響を受けた企業の業績悪化が鮮明に

トヨタが発表したグループの3月期の決算は、売上高に当たる営業収益は前年比で18.4%増え、37兆1542億円と過去最高を更新した。一方、営業利益は、資材価格の高騰などが影響し9.0%減少し2兆7250億円となった。一方、三菱自動車は純利益が約2.3倍の1687億円で、過去最高になったものの、今年、中国市場に導入したプラグインハイブリッドのSUV「アウトランダー」が低迷。生産停止となった影響もあり、世界販売台数は11%減った。

業績好調なのが大手商社2社だ。資源高と円安が奏功し、三菱商事、三井物産ともに最終的な利益が初めて1兆円を超えた。値上げで業績を伸ばしたのが、すき家などを展開するゼンショーホールディングスだ。売上高7799億円で、前年比18.4%増加。すき家は、2022年12月、牛丼並盛を税込350円から400円に値上げした。行動制限の緩和で客足が急回復したこともあり、連結の営業利益は、前期の2.4倍となる217億3400万円と、11年ぶりに過去最高となった。

最終利益が約2.6倍に伸びたのが、三越伊勢丹ホールディングスだ。特に伊勢丹新宿本店の売り上げは3270億円を超え、1991年のバブル期の売上高を更新し、過去最高を記録。富裕層向けの外商が好調だった。

2023年3月期の決算発表では、コロナや資源高の影響を受けた企業の業績悪化が鮮明になっている。任天堂は家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の販売台数が低迷し、売上高は1兆6016億円で、2022年より5.5%減った。半導体不足で生産に影響が出た上、コロナの影響で年末商戦が不調だった。

大手電機メーカーのシャープは、原材料価格の高騰に加え、液晶パネル事業の業績悪化により、最終損益が2608億円の赤字となった。また、円安による輸入コストが大きく影響したニトリホールディングスは、純利益が前年比1.6%減の951億円となった。単独決算だった時期を含め、減益は24年ぶりだ。

全体の約5割が出そろった今年3月期の決算。SMBC日興証券によると、決算発表を終えた753社のうち、438社で、最終利益が増益だった。また、上場企業の純利益の合計額は、前期比で7.4%増えた。

こうした状況を受け、東京株式市場の日経平均株価は、好調な決算の見通しや株主還元の拡充などを発表した銘柄などに買い注文が集まり、年初来高値を更新。5月12日は2万9388円30銭で取引を終え、終値としては1年6か月ぶりの高値となっている。

2023年3月決算は12日時点で開示率は52.5%。売上高はプラス17.5%、営業利益はプラス7.0%、最終利益はプラス4.4%となっている。

中身を見ると若干明暗が分かれ、製造業がマイナス5.5%だったのに対し、非製造業が34.7%だった。

――全体としては良い決算だったと言っていいのか。

りそなアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 黒瀬浩一氏:
そう言っていいと思います。終わった期は前半に資源高と円安で潤いました。ところが途中からITの不況が来て、最後の最後に経済再開とインバウンドで盛り返して、ある程度良いところに着地したと言っていいと思います。