今週お伝えする「SDGs・ウィーク」。国連が定めた17の目標のうち今回取り上げるのは、「つくる責任、つかう責任」。台湾が実効支配する金門島。かつて、中国軍によって47万発もの砲弾が撃ち込まれました。その砲弾が新たな形となって台所で活躍しています。
視界の先には中国福建省・厦門のビル群。砂浜には中国軍の進入を防ごうとした残骸も。
“中国に最も近い台湾”金門島です。
金門島で暮らす陳書壁さん(85)は、65年前の恐怖を今も記憶しています。
金門島で暮らす 陳書壁さん
「子どもも3人いて、机の下に隠れたの。まだ、防空壕もなくて本当に悲惨でした」
陳さん一家を襲ったものが、今も自宅に保管されているといいます。
「これよ、いまも残してあるの。命中したら死んじゃうわ」
自宅前に着弾したという、鋼鉄の砲弾です。
1949年、共産党との内戦に敗れた国民党は中国大陸を追われ、台湾に拠点を移します。このとき金門島も支配下に置きますが、1958年8月23日、中国軍は島を奪還しようと砲撃を開始。21年にわたりおよそ47万発の砲弾を撃ち込み、台湾側は軍人、島民ら600人以上が死亡したといいます。
一方で砲弾の中身は、当初は火薬などでしたが、次第に共産党の「宣伝ビラ」へと変わっていき、爆発せずに残るようになったといいます。
金門島の鍛冶職人・呉増棟さん(65)は、50年以上前から砲弾を新たな形へとよみがえらせています。
記者
「めちゃくちゃ重たい。何キロくらいですか?」
金門島の鍛冶職人 呉増棟さん
「一番軽いのだよ」
記者
「20キロとか30キロくらいありませんか?」
金門島の鍛冶職人 呉増棟さん
「だいたいそんなくらいだね」
この砲弾からできるのが「金門包丁」です。2、30キログラムの砲弾から、およそ40本の金門包丁を作ることができるといいます。金門島は鋼材が潤沢とは言えず、呉さんの父親が砲弾を使い始めたといいます。
「廃材の有効活用」という認識でしたが、今は違うといいます。
金門島の鍛冶職人 呉増棟さん
「世界に戦争は不要で、砲弾を包丁に変えることで、この世界は楽しく平和なものになります」
砲弾を撃ち込んだ中国側の観光客からも支持されているといいます。
金門島の鍛冶職人 呉増棟さん
「中国人はみんなこの包丁が中国軍の砲弾だと思って拒絶すると思っていたが、実際は私たちの想像を完全に超えていました。みんな私たちの考えと同じだったからです」
65年前、自宅の前に砲弾が落ちたという陳さん。一家で金門包丁を愛用し、今は娘の黄さんに引き継がれています。
金門包丁の愛用者 黄秀珍さん
「よく切れるわ。この鋼鉄製の包丁じゃないとすぐ壊れちゃうわ」
中台関係が緊張する中、台所では戦争の残骸が活躍し続けています。
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