国交省OBによる民間企業への人事介入問題で、斉藤国土交通大臣は国交省の現役職員が非公開の人事情報をOBに送ったことが事実であったと認めました。

この問題はおととし5月、民間企業「空港施設」の取締役だった国交省OBの山口勝弘氏が「国交省側の意向」という趣旨の発言をして自らを副社長にするよう要求し、翌月、副社長に就任したものです。

先月28日、「空港施設」の「独立検証委員会」が発表した調査報告書により、山口氏がおととし3回にわたり、国交省の現役職員から、職員の入省年次や役職がまとめられたものなど、その時点で非公開の人事異動情報をメールで受け取っていたことが確認されていました。

斉藤大臣は衆議院の国土交通委員会で、「独立検証委員会」の報告書を受けて省内で行った調査の結果について述べ、現役職員から山口氏へのメールの送付が事実だったことを認め、「未公表の職員の異動に関する情報が外部の者に共有されたことは大変遺憾であり、職員に対し厳しく注意した」としました。

メールが送付された3回のうち1回は、おととし7月1日に発令予定の異動情報を盛り込んだ通称「線引き」と呼ばれるもので、退職予定者を含む職員の氏名、入省年次、現職と異動先を記載し、前任と後任の間を線で結んで異動全体の流れを整理した私的な資料でした。

これが報道発表の前日である6月29日に他の受信者にアドレスがわからないように送られるBCCで一斉送信されていましたが、職員が送信メールを保存していなかったため、BCCの宛先が誰なのか、国交省OBが山口氏の他にも含まれていたのか、などについては不明だということです。

しかし、「線引き」を送付することは国交省で長年にわたり、「慣習的に」行われていたため、直近の今年4月に線引きを送付された一斉メールを調べたところ、BCCの宛先が1058件で、うち173件が政府ではない外部のアドレスであったことがわかりました。そのアドレスが、具体的に誰なのかは現時点では「わからない」ということです。

立憲民主党 城井崇 衆院議員
「大臣、報道発表の1日前、未公表なんですよ。遺憾では済まない。(国交省の)内部ではなくて、未公表の段階で外部に出たから問題だということを申し上げているんです」

斉藤鉄夫 国交大臣
「いわゆるこの『線引き』を作成し、送付すること自体は法律に違反するものではございません。しかしながら、この情報が内示後ではあるけれども、公表前に外部に漏れたことについては、我々も深く反省し、規律はしっかりただしていきたい」

立憲民主党 城井崇 衆院議員
「人事情報という個人情報の塊(線引き)が、慣習的に外部に出ているのが問題です。職員の前任・後任がわかります。いつ退職しそうかもわかります。いつも送ってもらっているのでしたら、職員の職歴を追うことも可能なんです。まさに天下り、斡旋支援資料なんです。そんな資料を民間人である職員OBにも慣習的に送っていました。そのOBが(国交省の)許認可権をちらつかせて民間企業の人事に介入していた」

斉藤国交大臣は「線引き」は職員やOBの再就職を目的に情報提供したものではないが、退職者情報も含まれており、発令前に外部に共有されたことは再就職等規制違反に関して国民の疑念を招きかねないとして、改善策を検討したいとしました。

その上で、173件の政府外アドレスのメールの送り先について、「最大限、努力して示したい」として特定する方針を示しました。

国交委員会で質問した立憲民主党の城井議員はこの問題について、客観的な全省調査の実施を求めました。