政府が掲げる資産所得倍増プラン。実際のところ、どうやってお金を増やすのか、投資のプロに聞いてみた。

投資とギャンブルは明確に違う。とっつきやすいのは「投資信託」「リート」。

――最近はあらゆるところで物価上昇を感じています。自分でお金を増やしていかないと将来大丈夫なのかなと思うようになりました。

ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏:
お金をある程度増やさないと、どんどん目減りしていってしまうとよく言われます。100万円を定期預金にした場合、30年後に受け取る利息はたったの480円です。今定期預金の金利は0.002%です。仮にこの先1%ずつ物価が上がっていったら、今100万円で買えるものが、30年後には134万円出さなければ買えなくなるということです。お金を増やすというよりも、実質的に減らさないこと、これが一番大事だと僕は思っています。今100万円で買えるものを将来も134万円がちゃんと出せるように、物価に負けないことが、真の意味での資産防衛ということになるわけです。

――まだ投資を始めていない人のためにも、基本としてどのような種類があるのかから見ていきたいと思います。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
「株式」、「債券」、「投資信託」、「REIT(リート)」、「FX」などがあります。リートは不動産の投資信託です。アパート、マンション経営をやるためには何千万円という元手が必要なので、なかなか普通の人にはできません。リートはオフィスビルや倉庫といった不動産を小口で証券化したものなので、一般の人でも比較的買いやすいものです。FXは為替の変動にかけるものです。為替は日々ものすごく大きく動いてなかなか予測もしづらいので、私は一般の人にはFXはあまりおすすめしていません。

――初めての人におすすめの種類というのは。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
投資信託とリートぐらいがとっつきやすいと言ったらいいのでしょうか。株式を買うとなると、個別の企業は倒産してしまうこともあれば、そこまでいかなくても経営が悪化することはしょっちゅうあります。投資信託は、何十社もしくは何百社の会社をパッケージにしたものなので、その中の一つ二つ倒産することがあっても、全体がドーンと沈むということはあまりないわけです。投資信託はプロが銘柄を選ぶというのもありますし、若干手数料は払わなければいけないけれども、投資信託とかリートが、とっつきやすい。

――投資はギャンブルではないかとか、いいイメージがない人もいます。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
日本ではそういうイメージが本当に強いです。学校でも投資なんて教えてくれません。投資とギャンブルは明確に違います。

企業は働いている人たちが日々努力をして、改善を積み重ねているわけです。企業の価値、もしくは株式の価値は、長い期間をかけて少しずつ上がっていく。個別の企業だと経営が悪化したりとかもありますが、投資信託は何十社、何百社集めていますから、全体の価値は少しずつ上がっていくものなのです。

投資は勝った人、負けた人がもちろん出るのですが、全員の損益を合計するとプラスになります。そのかわり時間はかかります。手っ取り早く儲かりはしませんよということです。それに対して、ギャンブルはみんなから集めた掛け金の一部を主催者がもらって、残りを当たった人で分けるというものです。だから当たった人、外れた人全員の損益を合計するとマイナスになります。ギャンブルにはスリルはあるし、夢を買うとか、楽しみもわくわく感もある。ギャンブルは消費なのです。

投資は時間はかかるけれども全員の損益はプラス。合計がプラスになるのだからみんながハッピーになります。その違いが一番大きいのです。投資はギャンブルでも何でもありません。

――小学校、中学校でもっとわかりやすく楽しく教えてくれれば、そういう金銭感覚、金融感覚というのは若い頃から養われるのだろうなと思います。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
だんだん日本もそういう方向に向かいつつあります。今年の春から高校の家庭科の授業で投資が必修科目になりました。家計管理という中で、投資や投資信託を教えるように、ようやくなりました。本当は小学生、義務教育から少しずつやっていった方がいいのになと思っています。