子どもたちが無料で食事が出来るチケットが、県内の150以上の店舗に設置されていることをご存じでしょうか。3年前に始まった「みらいチケット」と呼ばれるこの取り組みの現状と課題を取材しました。

タコスプーン 伊芸和能店長「このチケットを大人のお客様が300円で購入しまして、来店された子ども達がこのチケットを使ってタコライスが食べられるシステムになっています」

大人が寄付したチケットを使って、子どもたちが無料で食事出来るこちらの取り組み。「みらいチケット」と呼ばれ、県内で3年前に始まりました。こちらのお店では、毎日10人程の児童がみらいチケットを利用しています。

タコスプーン 伊芸和能店長「沖縄は貧困問題とか多いので、自分も片親だったので、共感持てて取り組みに参加しました。ちょうど3年前くらいですかね。大人の方がメッセージを書いたら、食べ終わった子ども達が返事のメッセージを書いて、メッセージを書いてくれたことに対してまた大人がチケットを購入してくれて、循環しています」

3年前、クラウドファンディングを使って「みらいチケット」を県内に広めたのは、「タコライスラバーズ」代表の山川宗徳(やまがわ むねのり)さんです。

タコライスラバーズ 山川宗徳代表「奈良県の橿原市が発祥のみらいチケットなんですけど、ニュースで取り上げられているのを見て、これってまさしく沖縄に必要なものじゃないかという風に考え始めて」

自身も裕福とは言えない家庭で幼少期を過ごし、その後、警察官になった山川さん。警察官として働く中で、貧困に苦しむ子どもを救いたいと考える、ある出来事があったといいます。

タコライスラバーズ 山川宗徳代表「小学生の男の子が万引きしているという訴えがあったんですけど、そこで話を聞いたら盗っていたのが総菜のミートボールだったんですね。その時に自分の過去とリンクして、実際に僕も総菜を盗ったこともあったし、その中にはミートボールもあったし。万引きの現場で対応している時に自分を見ているような感じになって悪さしてる、お腹空いてる子どもたちにそういった未然防止、そこは僕たちがみらいチケットを普及させて、そういったところをサポートできるなら自分たちでやろうかなと」

山川さんの思いに共感する店舗や企業によって、開始3年でみらいチケットの協力店は、県内で161店舗に増え、去年は大手スーパーのタウンプラザかねひでも参入しました。

タウンプラザかねひで与儀公園市場 比嘉健二店長「こういった取り組みを聞いて、スーパーでも出来ないかということから始まって、『この取り組み応援しているので、かねひでさんも頑張ってくださいね』という声掛けをしながら購入されるお客さんも多いです」

比嘉店長は、嬉しそうにチケットを利用する子どもの姿が印象的だったと話します。

タウンプラザかねひで与儀公園市場 比嘉健二店長「小学校3年生くらいだと思うんですけど、お子さん2人が来て、チケットを取って『ありがとうございます』というコメントを書いて、2人で嬉しそうにレジの方にチケットを持っていく姿を見ました」

順調に普及しているように見える「みらいチケット」ですが、山川さんは、新たな課題に直面しています。

タコライスラバーズ 山川宗徳代表「子ども達にどうやって周知させるか。学校、PTA、そこから子ども達に直接、この小学校区には何々ってお店にみらいチケットがあるよっていうのが、みんながわかるような状態」

協力店を増やすのと同時に、子どもたちへの周知を進める必要があると話す山川さん。他にも、取り組みを持続するための資金集めなど、様々な課題があるといいます。

タコライスラバーズ 山川宗徳代表「目指すところは、大人達、地域のつながりだけでここまで広がってきた、そこで食事をした子ども達が大人になって、これを忘れていなくて、今度は自分たちがお返しをする番だよなっていう風に動き出す、受けた愛情を次の世代にしっかりとつないでいくような、大人に育ってもらいたいなと思います」

ただ空腹を満たすだけではなく、受けた愛情を忘れないでほしい。3年前に山川さんが始めた取り組みは、未来を持つ子ども達へと受け継がれています。