6年に1度のフィリピン大統領選挙で圧勝したのは、“独裁者”の息子マルコス氏。副大統領は“強権”ドゥテルテ前大統領の長女。フィリピン国民は、なぜ“独裁者”と“強権大統領”の子女を選んだのでしょうか。

■フィリピン新大統領に"独裁者の息子"マルコス氏が圧勝


今回のフィリピン大統領選挙で当選したのは、フェルディナンド・マルコス元上院議員です。2位の倍以上の票を獲得する記録的な圧勝でした。その父親、故マルコス元大統領は、およそ20年間、独裁体制を敷き、国民を弾圧し、多くの無実の市民が拷問などで死亡しました。また、一族は私服を肥やし、不正蓄財は少なくとも1兆3000億円に上ると言われています。



そして1986年、怒りが爆発した人々によってピープルパワー革命が起こり、マルコス元大統領は失脚、家族でアメリカに亡命しました。生活をしていた宮殿には、母イメルダ夫人の高級靴およそ3000足などが残されていて、その贅沢ぶりも明らかになりました。息子のマルコス氏は父の死後、1991年に帰国。知事や上下院議員を歴任してきました。

■副大統領は“強権大統領”の長女


また、フィリピンでは副大統領も同時に国民投票で選ばれますが、当選したのはドゥテルテ現大統領の長女サラ氏です。ドゥテルテ大統領も、「麻薬撲滅のためなら容疑者を殺す」という強権的姿勢で知られています。今回の選挙では、独裁者と強権大統領の子どもがタッグを組みました。

実は、フィリピンでは民主化後、民主主義を重んじる指導者がつづきましたが、貧富の差や治安問題が解決されず、有権者の間に幻滅が広がりました。


過激でも、強い指導力を持つドゥテルテ大統領のようなリーダーを求めるようになったのです。マルコス氏もドゥテルテ大統領の「強権政治」の継承を公言しました。

■マルコス氏はどうやって支持を獲得?


マルコス氏が選挙戦で力を入れたのがユーチューブなどのSNSです。国民の年齢中央値は25.7歳と若く、有権者の過半数が独裁政権時代を知りません。そんな若い層に対し、父親の闇の部分には一切触れず、「国を発展させた」と業績を美化し、「過去の栄光の回復」を訴えました。また、候補者討論会を欠席するなどして論戦も避け、政策の詳細は語っていません。

東京外国語大学の日下渉教授は、
「経済的に安定できず、不満をためている中間層の若者たちに特に支持を広げた」と分析。「彼らは、マルコス氏の『過去の栄光の回復』といったスローガンに期待を寄せた」と言います。

■マルコス氏への危機感も…


一方、父親の独裁政権下で弾圧を受けた経験を持つ世代は危機感を持っています。反マルコス派の一部はデモを行い、「マルコス氏は、うその情報を拡散して支持を集めた」として、選挙結果は不当だと訴えています。今後、国民の分断が広がることも懸念されています。

(サンデーモーニング2022年5月15日放送)