18年前の岡山国体を契機に「新体操のまち」を掲げた井原市で、新体操強豪校の高校生らが練習拠点を失う事態となっていましたが、きょう(26日)新しい動きがありました。
練習拠点がなくなる‥なぜ、そんな事態となったのか。まずは背景から説明します。そもそもは、岡山県教育委員会が「複数校地」、つまりは一つの学校が2か所に分かれる状態の解消を図ろうとしたことにあります。県教委は今後の人口減少社会を見据え、2019年2月に「複数校地」の解消を明記した計画を策定しました。

井原高校は、北と南に校舎が分かれていて、男子新体操部やサッカー部、弓道部などの部活はこの南校地を練習拠点としていましたが、県教委はその南校地の利用を今年3月末までと決定。その結果、男子新体操部などは練習拠点を無くしてしまったのです。

こうした騒動の中、井原市はきょう(26日)臨時市議会を開き、「1年間、市が維持管理費を負担し、練習会場を確保する」とする補正予算案を提出し、可決されました。

(大舌勲井原市長)「井原高校南校地の跡地を岡山県から借用することにより、令和4年度末まで行っていた新体操のジュニアから大学生までの練習ができる環境を確保する」

一糸乱れぬ動きで汗を流す井原高校・男子新体操部。通算6回、インターハイを制覇するなど全国でも屈指の強豪校です。この男子新体操部や地元の体操クラブなどが練習を行う井原高校南校地が閉鎖されてしまったのです。
この問題は2020年3月、岡山県教育委員会が「2023年3月末で南校地を閉鎖する」と発表したことに端を発します。井原市と県で南校地の利用について協議を進めましたが、その決定は覆らず、体育館を使用していた男子新体操部などあわせて3つの団体が、4月から練習拠点を失ったのです。きょう(26日)の市議会で井原市は、県と協議を重ねた結果、「練習会場等の検討期間として1年間、市が無償で借り受けることで跡地を使用可能となった」と報告。光熱費などの維持管理費に関する392万円の補正予算を提案しました。

予算委員会で、案に賛成とする議員からはこんな意見も。
(三宅孝之 井原市議会議員)「県教育委員会と県立井原高校との課題であり、2つ目は、岡山県と井原市との課題です。練習場を奪われた県立井原高校新体操部と、目的の無い、使い古した施設の負担を負わせられる井原市民の人権を全く考えていないということに大きな問題があると考えています」
(猪原愼太郎 井原副市長)「本市としましては、一日も早く新体操関係者への練習場を確保したいということで、そちらの方を優先させていただきまして、今回、1年間(5月~来年3月)維持管理にかかる費用を上程させていただいた」

(井原市議会での採決)「ご異議ございませんか?」
「異議なし」
「ご異議なしと認めます。よって本案は原案の通り可決することに決しました」
また市議からは、改めて岡山県と南校地の利用のあり方や予算計上などの対応について、今後も協議を行うよう要望が出ました。ひとまず1年間は練習拠点が確保されましたが、それ以降、新体操の競技力の維持向上に不可欠な練習の場をどうしていくのか、早急な検討が求められます。猶予は1年間です。