4月24日、アメリカの新居に到着した町田は笑顔で荷ほどきを始めた。スーツケースには、びっしりと日本食が詰め込まれていた。

町田:
(部屋を見渡して)めっちゃきれい。めっちゃきれいじゃん。
基本的に日本で食べているものと同じ物を食べられるように準備しています。
試合前の食事は基本、うどん。
食事と同じく大切なのが、疲れを癒すバスルームだ。
町田:
(バスタブが)浅かった(笑)。
ちょっと待って、(腰のあたりに手をおき)ここまでしか入らないかもしれない。
身長162cmの町田にとっても少々小さめのバスタブに、苦笑した。
新天地のWNBAは、平均身長184センチ、町田はリーグで最も低身長となる。町田が所属するミスティックスは、3年前にリーグ優勝を果たし、八村塁(24)が所属するウィザーズとは兄妹チームだ。

町田:
本当にオファーを頂けるとは思っていなかったのでお話をいただいて、挑戦してみたい気持ちになりましたし、このサイズ(身長162センチ)で挑戦することも、なかなか無いと思うのでチャレンジしてみようかなって思いました。
渡米4日目。チームの練習に初参加した町田をチームメイトは笑顔で迎えた。
アリーシャ・クラーク
「ハ〜イ、ウェルカム。来てくれて、皆、うれしいわ。施設は気に入った?」
町田
「めっちゃ、きれい」
アリーシャ・クラーク
「東京五輪でアメリカを苦戦させたあなたが来て、とてもうれしい。瑠唯が来るってわくわくしていたの」
町田の持ち味は、“周りを生かすプレー”だ。チームメイトの特徴や戦術を、一刻も早く理解することが求められるがこの時点で開幕まで、あと10日。そこで重視したのが、コミュニケーション。プレーごとに通訳を介して狙いを確かめ、イメージを擦り合わせた。
町田:
全然、まだ。味方と(プレーが)合っていないと自分で感じたのでこれからちゃんと合わせていけるようにしたい。
翌日のミネソタ・リンクスとのプレシーズンマッチ。町田は第1クオーター途中から出場すると、レイアップシュートで初得点。さらに味方の得点をアシストし、出場18分で2得点2アシストした。
町田:
あまり馴染んでいる感じではなかった。チームメイトの特徴をもう少し理解しないとダメだな。

その日の夜、彼女は気づいた課題や反省を、バスケノートに書き留めた。幼い頃からずっと続けてきた、成長するための習慣。ノートの中身は見せてもらえなかったが、この日書いたことの一つを教えてくれた。
町田:
どの選手も当たりが強いので、きょう20分も出てないですけど、体が筋肉痛になっているので、このフィジカルにも慣れながら、どうやってこのフィジカルに対応していくのかっていうのを考えながらやっていきたいと思います。

小柄な町田にとって、フィジカルの壁を乗り越えることも、課題の一つ。そして、渡米から2週間、ついに開幕戦を迎えた。
町田:
初めてのことなので緊張もすると思いますけど、自分らしさを忘れないように、相手の分析もしますけど、味方の分析もしながらやっていけたらいいかな。
第1クォーター途中からコートに立った町田は、12秒後に味方の得点をお膳立てし初アシストをマークした。第4クォーターには自ら切り込んでレイアップシュートで記念すべき初得点を挙げ、チームの勝利に貢献した。

町田はWNBAで、萩原美樹子、大神雄子、渡嘉敷来夢に続き、日本人4人目のデビューを果たした。
町田:
名前を呼ばれて、パッと(コートに)行って緊張しながら出ていた部分もあったので試合が終わってからWNBAで試合をしているんだなって感じました。
ゲームメイクのところで、得点ができていなかった時にどう攻めるかというところまで、今日はできなかった。課題が残ったゲームだった。
お昼にしっかり“うどん”を食べてデビュー戦に挑んだ町田。開幕から3試合目となる13日(日本時間)には、エーシズ戦で初めて先発メンバーに名を連ねた。約30分の出場で9得点4アシスト1リバウンドの活躍を見せ89―76で勝利、チームを3連勝に導いた。
シーズンは始まったばかり。レギュラーシーズン残り33試合(全36試合、8月15日まで)、町田の活躍に注目だ。