みなさんご存じの『浄水器』『ウォーターサーバー』。実際に使っている方や過去に使っていた、そんな方も非常に多いと思います。また近年では「天然水」や「ミネラルウォーター」が手軽に買えることもあり、“美味しい水をコンビニに買いに行く”そんな日常も当たり前になりました。

そこで今回は、日本の【水事情】をピックアップ。一口に水といってもその種類は様々で、特徴もかなり違います。生活する上で欠かせない水について、分かりやすくご紹介します。

読み終わったころには、貴方の【水】に対する印象が変わっているかもしれませんよ。


◆『浄水器』と『ウォーターサーバー』とは?

1.『浄水器』、『ウォーターサーバー』の違いは?
では、まず水に関わる主に家庭やオフィスで使用するこの2つの違いから。ご存じの方も多いと思いますが簡単に説明しますと、下記になります。
  
■自宅の蛇口に直接器具を取り付け利用する=『浄水器』
■交換式のタンクから冷水や温水を供給する=『ウォーターサーバー』

『浄水器』が普及したのは高度成長期の1960年ごろ。鉄道などの交通インフラも整備されてきた時代です。同時に水源地の汚染も日本中で問題視され、家庭でも“安全に水道水を使用したい”という意識が向上したことから、『浄水器』が普及したと言われています。

次に『ウォーターサーバー』が出始めたのは、2000年代。元々『ウォーターサーバー』はアメリカで誕生し1980年代に日本に上陸したと言われていますが、『浄水器』で満足していた日本人にはなかなか受け入れてもらえず…。

普及の直接的な要因とも言われているのが、日本を襲った震災です。1995年に阪神淡路大震災、2011年に東日本大震災が起り、水道はもちろん電気も止まり、実際に水を使用できない状況が長らく続きました。そんな状況から、インフラに影響を与えず水もお湯もすぐに出る『ウォーターサーバー』を、防災の観点から設置する人が増えたと言われています。


2.『浄水器』と『ウォーターサーバー』の利用者割合
『浄水器』『ウォーターサーバー』を使っている人、使っていない人の割合を調べてみました。

※2023年RKBオンライン調べ・20代~70代男女100人にアンケート

現在『浄水器』を利用している人が34%、『ウォーターサーバー』を利用している人が12%となっています。


どちらも使っていない人が54%で半数以上を占めましたが、今はインターネットやスーパー・コンビニなどで水を手軽に購入できることもあり、あえて『浄水器』や『ウォーターサーバー』を利用しないという人も多いようです。


3.『浄水器』の水は「水道水」、『ウォーターサーバー』の水は「天然水」
『浄水器』の水と『ウォーターサーバー』の水とでは、根本的に種類が異なります。

『浄水器』は家庭の蛇口に装着するものですので、基となる水は「水道水」です。

日本の「水道水」は世界的に見ても水質がよく、厳しい水道法によって供給されています。

『ウォーターサーバー』で使用する水はというと、主に「RO水」または「天然水」になります。

「水道水」などの原水にRO膜(逆浸透膜)を用いて不純物をろ過した水が「RO水」、特定水源の地下水などを沈殿・ろ過・加熱殺菌以外の物理的・化学的処理を行わない水が「天然水」となります。

『浄水器』で使用する水と「RO水」の基は「水道水」なので似ていますが、「天然水」は全く違う種類の水だということになります。この「天然水」ですが、実は基準がめちゃくちゃ細かいんです。


◆「天然水」と「ミネラルウォーター」とは?

1.とにかく細かい!「天然水」の定義
先ほど『浄水器』の水と『ウォーターサーバー』で利用できる水の種類を説明しましたが、『ウォーターサーバー』で利用できる水こそが、皆さんがよく耳にする「天然水」になります。

「天然水」の定義(種類)は、農林水産省によって細かく定められています。

1.浅井戸水:地下水が湧き出る第一層目の、浅い位置にある水源
2.深井戸水:第一層目より深い第二層目を水源とする水で、地上から遠いため安全性が高くミネラル分も多い
3.湧水:崖の下や丘の谷間から自然に湧き出る地下水
4.鉱泉水:水温25℃未満で自噴する地下水。ミネラル分で種類が分けられる
5.鉱水:自噴しない地下水で、ポンプから採水する。ミネラル分で種類が分けられる
6.伏流水:川床の下に浸透して流れる水。砂層などでろ過されるので水質が良い
7.温泉水:水温25℃以上で自噴する地下水。ミネラル分で種類が分けられる
※農林水産省のガイドラインより抜粋

一口に「天然水」といっても、こんなに種類があるんです。

例えば7.の温泉水は温泉街などの観光地に行くとあちこちで販売されていますが、要は温泉水=「天然水」を飲んでいる、ということになります。


2.「天然水」を原水にし、加工を施したのが「ミネラルウォーター」
「天然水」は先ほどの7種から構成されており、特定水源の地下水などを沈殿・ろ過・加熱殺菌以外の物理的・化学的処理を行わない水のことを言います。

では「天然水」と同じく、よくコンビニでも目にする水といえば「ミネラルウォーター」。実は「ミネラルウォーター」とは、「天然水」をろ過、沈殿、加熱殺菌の加工に加え、化学処理やミネラルの添加、一度ミネラル分を取り去って味の調整をしてから再添加などを施した水のことを指します。

「ミネラルウォーター」の源が、「天然水」という訳です。


◆水の硬さ(硬度)とは?
1.水の硬さは <軟水>と<硬水>に分けられる
水には大きく2つの硬さがあり、それぞれ<軟水(なんすい)><硬水(こうすい)>と呼ばれています。読んで字のごとく、<軟水>は軟(やわ)らかい水、<硬水>は硬い水という意味です。

<軟水>と<硬水>の定義はWHO(世界保健機関)によって厳しく定められており、硬度120mg未満が<軟水>、硬度120mg以上が<硬水>とされています。

その違いは採水する地域によって異なり、日本は花崗岩(かこうがん)が多い上に山から海までの傾斜がきつく、起伏の激しい地形です。その為山から海まで流下する水の速度が比較的早く、ミネラル成分の浸透が少ない為<軟水>となります。

一方で、ヨーロッパ等は石灰岩が多く山から海まで傾斜のゆるやかな地形が広がっています。その為雨や雪の水はゆっくりと石灰層を通ってろ過され、ミネラル成分がたっぷり溶け込んだ<硬水>となります。

つまり、地形により採水できる水が異なることから、日本で採れる水は主に<軟水>、ヨーロッパ等では主に<硬水>が常用されていることになります。

その為日本の「水道水」のほとんどが<軟水>、「天然水」や「ミネラルウォーター」も同じく<軟水>が多いと言われています。


2.  <軟水>と<硬水>とでは、飲み口が全然違う
普段わたしたち日本人が口にしているのが<軟水>ということになりますが、それに慣れていると<硬水>は全く別物です。

<軟水>はまろやかで飲みやすいのですが、<硬水>は口当たりが重く、少々苦く感じます。しかしながら<硬水>はミネラルが豊富な為、メリットも沢山あります。

■軟水(なんすい)
メリット:赤ちゃんや子供も安心して利用でき、髪や肌にも優しい
デメリット:栄養補給には向かない

■硬水(こうすい)
メリット:ミネラルが豊富
デメリット:下痢や吐き気などお腹が緩くなりやすい


3.コンビニでも手軽に<軟水><硬水>が買える
日本の水市場は<軟水>が多いのですが、近年健康や美容思考の強い人も増え、体の内側からサポートしてくれる<硬水>を好んで飲む人も増えているようです。

今はコンビニやスーパーでも手軽に購入できますので、興味のある方はぜひそれぞれの水の種類や硬度の違いを試してみてはいかがでしょうか。?


4.コンビニやスーパーでも購入できる<軟水><硬水>はどんなのがある?
<軟水>
・いろはす(ミネラルウォーター)
・南アルプスの天然水(天然水)
・クリスタルカイザー(ミネラルウォーター)

<硬水>
・コントレックス(ミネラルウォーター)
・エビアン(ミネラルウォーター)
・飲むシリカ(天然水)


◆「水」についてのまとめ
今回のお話を内容をまとめると下記になります。

?「水道水」は、安全で美味しい水
?『浄水器』は、「水道水」をより綺麗にしてくれる機器
?「天然水」は、水源の水そのまま
?『ウォーターサーバー』は、「天然水」が手軽に飲める機器
?「ミネラルウォーター」は、「天然水」をより綺麗にした水

いやー、水の世界って奥が深いですね!


◆結局、どの水が一番いいの??
ここからはあくまでも筆者談です。

日本のほとんどの「水道水」が<軟水>のため、飲み水としても生活水としてもなにひとつ問題はないと思いますが、それもこれも日本の水に対するきめ細かな制度が整っているからだと思います。

世界には水不足に悩まされている国、茶色く濁った水を生活水に使う国、沢山あると思います。そんな中、24時間365日、蛇口をひねれば安全な水が出てくる日本は、本当に幸せな国だと思います。

そんな中で「天然水」や「ミネラルウォーター」を買ったり、<軟水>や<硬水>を選んだり、害なく美味しく飲める「水道水」がある中で、贅沢な悩みなのかなとも思ったりします。

結論、どの水がいいという答えを出すことは難しいのですが、日本で難なく使える「水道水」の有難みに感謝しつつ、『浄水器』や『ウォーターサーバー』はお財布と相談の上活用し、その中で自分好みの「天然水」や「ミネラルウォーター」を見つけ、時には栄養補給に<硬水>を活用してみる、そんな“水の使い分け生活”も意外と楽しいのではと思います。