東京大学らの研究グループが、神経難病の多系統萎縮症に対する世界初の治療法を開発したと発表しました。

多系統萎縮症は平均して50代後半に発症し、「尿失禁や排尿困難」、「手足のふるえなどパーキンソン病に似た症状」や、「歩行時のふらつき」など、さまざまな組み合わせで症状が出るもので、指定難病の一つです。

進行性の病気で、発症から5年で半数の患者が車椅子を使用するようになると言われ、有効な治療法が確立されていません。

日本には1万2000人程度の患者がいるとみられ、大部分は遺伝とは関係なく個々に発症するものと考えられています。

東京大学の辻省次名誉教授らのグループが、まれに存在する遺伝的な家族性多系統萎縮症の患者らの遺伝子を解析したところ、サプリメントとしても知られるコエンザイムQ10を作る遺伝子に変異がおきていることを突き止めました。

遺伝性ではない患者についても調べたところ、▼同じ遺伝子に変異がある患者が病気でない人と比べておよそ3倍いることや、▼遺伝子変異がなくても体内のコエンザイムQ10の量が低下している患者が多いこともわかりました。

研究グループでは、高用量のコエンザイムQ10を投与すれば、病気の進行を抑制できるのではないかと考え、およそ130人の多系統萎縮症患者に対して高用量のコエンザイムQ10、もしくは偽薬を投与する試験を行いました。

その結果、コエンザイムQ10を飲んだグループでは、偽薬を飲んだグループと比べて症状の悪化が抑制されたとみられるということです。嘔吐、下痢などの重篤な副作用も見られましたが、現時点では許容範囲と研究グループではみています。

これまで多系統萎縮症に対する有効な治療はなく、辻名誉教授は「進行性の神経難病について、その進行を抑制するような治療薬の可能性を見いだしたというのは非常に大きい成果だ」と話しています。

研究グループでは製薬会社と協力し、実用化を急ぎたいとしています。

なお、今回の治験で投与されたコエンザイムQ10は、市販されているサプリメントとは用量の桁が違うため、「治療目的で市販品を飲むことは控えて欲しい」と呼びかけています。