市場の再編からこの春で1年を迎えた東京証券取引所。市場の魅力を高める狙いでしたが、依然として稼ぐ力が弱い企業も多く、東証は、資本コストなどを意識した経営を行うよう企業に要請しています。

東京証券取引所は、プライム市場とスタンダード市場に上場するすべての企業、およそ3300社に対し、資本コストや株価を意識した経営をするよう異例の要請を行いました。

例えば、市場の評価のひとつであるPBRが1倍を割ってしまう企業に対し、改善策の開示などを求めています。

PBRとは、株価が割安か割高かを判断するための指標で、これが1倍未満となることは、企業が解散したときに株主の手元に残る「解散価値」より株価が低いことを意味します。

日本では、トヨタ自動車やソフトバンクグループ、三菱商事など業界を代表する企業でも、PBRが1倍未満の企業は少なくなく、プライム市場ではおよそ半分、スタンダード市場ではおよそ6割にのぼります。

これはアメリカやヨーロッパ市場の水準と比べても高く、これを放置すれば、国際競争力は高まらないと、東証は危機感を募らせていて、資本コストや株価を意識した経営を求めているのです。

日本取引所グループ 山道裕己CEO
「資本の効率的な使い方とか、あるいは株価を意識しているかは、今までこちらから要請したことはなかった。各企業と投資家の皆さんに建設的な会話をしていただくことで企業価値向上を実現してもらいたい」

今月新たに就任した日本取引所グループの山道CEOは、取材に対しこう話し、「企業価値の向上やマーケットの成長につなげるためにこれからやらなきゃいけないことはたくさんある」と意気込みを語りました。

市場の再編から2年目。今回の要請で、企業価値や市場の競争力の向上につなげられるかが焦点となりそうです。