
元々は浅い海で、建物などまったくない広大な干潟でした。その干潟に点々と浮かんでいた浅瀬のような島々に、長さ3メートルほどの木の杭を大量に打ち込み、それを土台として街を作ったのです。
土台となったのは124の島々。島と島の間が、その後、運河になりました。小さな島が密集していたため、ヴェネツィアの運河は場所によって細く入り組んでいるのです。

なかなか許可を得ることが難しいのですが、ヴェネツィアもドローンを使うと楽しい映像が撮れるところです。迷路のように張りめぐらされた運河網。その上を低く飛び、ゴンドラと同じように運河にかけられた橋の下をくぐって撮っていくと、本当に運河が道路の代わりだったことが実感できます。

海に面した断崖、粘土の大地、干潟など、さまざまな自然環境に人が手を加えていって生み出した世界遺産。イタリアは世界遺産が58もあって、世界一の数を誇ります。それは長い歴史があるからだけではなく、多様な自然があればこそだったのです。

執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤慶太