マスク依存の苦悩 若者が忘れてしまった本来の顔の魅力

顔の学習は30歳くらいまで続くのだとすると、もちろんここから学習を再開し、顔のインプットを増やしていくことは可能だ。しかし、マスク着用は個人の判断となったが、いまも多くの学生がマスク姿だ。

民間が行った、小学生から高校生300人への意識調査(※3)によると、子どもたちの約9割が「“脱マスク”に抵抗がある」と回答している。その理由の上位には、「自分の顔に自信がない」「恥ずかしい」「友達にどう思われるか不安」など、感染対策とは別の、心理的な理由が並んでいる。

山口さんはマスク生活によって若者の感覚に変化がおき、顔の魅力が動的から静的なもの中心になってしまっていることにも懸念を示す。

「江戸時代の日本人だったら、周りの顔しか見なかったけれども、今の日本人は、インターネットなどでセレブの顔ばかり見ていて、どんどん基準が高くなって、自分に厳しくなっているんじゃないかとおもいます。

でも、顔の魅力っていうのは、実は写真でパチッて撮ったものではなくて、もっと動的で、どういう表情していて、どういう問いかけをして、どういう話し方をしたかという、動きを含めたトータルで魅力なんです。本当だったら、表情を動かすことによって自分でいろいろ変えられるし、そこで自分なりの魅力っていうのを見つけられるのです。

しかし、それをマスクでストップさせ、忘れさせてしまったことが、若い人たちの辛さにつながっているようにも感じています。

コロナへの対応で、感染対策、つまり、今をどうするかということが続きました。でもこれからは、もう少し長いスパンで、子どもの将来のために、マスクは必要なのかを考えていく段階ではないかと思っています」

(3月16日放送・配信『SHARE』より)

※1 ※3『現役の小・中・高校生「マスク需要」に関する意識調査』東京イセアクリニック 2023 年 2 月 17 日
※2 Jenkins R., Dowsett A. J. and Burton A. M. 2018『How many faces do people know?』 Proceedings of the Royal Society B