台湾をめぐり米中の緊張が高まる中、台湾に最も近い沖縄県与那国島では昨年末、自衛隊の「ミサイル部隊の配備計画」が突然浮上しました。前の町長らは「国に騙された」などと反発しています。日本の最も西にある島で今、何が起きているのでしょうか。

与那国島にミサイル部隊計画 台湾有事を念頭に

日本の最西端、与那国島。
3月26日の日曜日が「海びらき」。はやくも夏の始まりでした。人口約1700人、自然豊かな小さな離島です。

近年は、ドラマや映画となった「Dr.コトー診療所」のロケ地としても人気となっています。

台湾から110キロしか離れていない与那国島に、自衛隊の駐屯地が開設されたのは7年前。誘致をめぐり島が二分され、住民投票の結果、僅差で実現したという経緯があります。

配置されているのは「沿岸監視隊」。自衛隊員は約170人です。
ここに2022年の年末、突如浮上したのが「ミサイル部隊の配備計画」。

沖縄防衛局の資料などによると、小さな島に新たに18万平方メートル(東京ドーム4個分)の用地を取得。

ミサイルを迎撃する地対空誘導弾の部隊などを設置するというものです。
突然、明らかになった計画に、島に自衛隊を誘致した前町長も反発しています。

「国の暴挙」「騙された」ミサイル部隊計画に反発

ーー初めて聞いたときは、どのように感じましたか?

外間守吉 前町長
「びっくりしましたね。やってはいけない、国の暴挙ですよ」

2010年、自衛隊を誘致する前の町長時代、取材にこう答えていました。

外間 町長(2010年)
「島の発展の起爆剤になるんじゃないか」

町有地の年間1500万円の賃貸料や人口増など、一定の効果はあったといいます。
ではなぜ、自衛隊誘致を自ら実現した前町長が、憤っているのでしょうか。

外間前町長
「(当時、防衛省が)監視部隊の名称を明言」

誘致の段階では、置かれるのはあくまで「沿岸監視部隊」という説明で、起工式の横断幕にも明記されています。その後の部隊の「強化」については、全く聞いていなかったといいます。

外間前町長
「なぜ中国が我々にミサイルを撃ってくるのか、何を根拠に言っているのか、全くわからない」

「銃口を向けるということは、中国にとっては『してやったな、ありがとう、我々が撃つぞ』と。“お膳立て”を逆に、日本政府はしている」

町長とともに誘致を進めた前議長も。

前西原武三 前議長
「自衛隊を配備して、時間が経っているうちにミサイル配備。騙された気がしてしょうがない。頭にきます」

与那国空港は、自衛隊機によって度々使用されてきました。

また2022年11月には、与那国島初の日米共同訓練が実施され、沖縄県で初めて機動戦闘車が公道を走行。さらに電磁波作戦部隊の配備も予定されています。

田里千代基 町議(2010年)
「断固反対です」

自衛隊誘致そのものに反対だった田里町議は、着々と進む自衛隊の強化に懸念を深めています。

町議が着目しているのが、今の町長が自民党の幹部に送った要請書です。大型港湾の整備を求めて、詳細な計画図まで付されていました。議会で町長を追及して明らかになったのです。

ーー町長の説明だと、ここにクルーズ船を?

田里 町議
「軍事利用のための軍港を作るのでは」
「(与那国島が)“要塞の島”に激変していくのではないか…」