農作物を荒らすなど、人間を悩ませる動物への対策として、「音が出る装置」で実証実験に取り組む岡山理科大学の教授については、以前からお伝えしてきました。そして今回新たに装置を設置したのは、空港とゴルフ場です。「航空機への鳥の衝突」や「芝生へのイノシシによる被害」を未然に防ごうというものです。

島根県益田市の萩・石見空港に設置されたのは、人間にはほとんど聞こえない高周波を出す装置です。空港では、全国で初めての設置となる、その名も「トリソニック」です。岡山理科大学の辻維周教授が、この装置で対策をするのは...鳥です。

こちらは(【写真を見る】参照)エンジンから火が出ている航空機。鳥と衝突する「バードストライク」と見られる映像です。「バードストライク」は重大な航空事故につながる恐れがあり、国土交通省によりますと昨年、国内でおよそ1400件起きているといいます。

このバードストライクを防ぐべく設置したのが「トリソニック」。カラスの住処とみられる広場に向け、4つのスピーカーからカラスが嫌うという12~15キロヘルツの高周波を流します。

(岡山理科大学 辻維周教授)
「鳥類でも、カモとカラスへの効果が検証されているので設置しました。空港に関しては、ここが最初です。『日本初』です」

「トリソニック」は、半径約200メートルの範囲で効果が期待できるといいます。しばらく使った後、効果を検証し、空港でのバードストライクによる事故防止に取り組みたいとしています。

一方、玉野市の東児が丘マリンヒルズゴルフクラブに設置されたのは、イノシシが嫌がる音を発する装置「いのドン」です。

以前から、イノシシの目撃が多い玉野市です。人の生活圏にも頻繁に出没。庭や田畑を荒らされるなどの被害も出ています。東児が丘マリンヒルズゴルフクラブでは、すでに様々な獣害対策をしていますが、より強化するために「いのドン」を導入したということです。

(東児が丘ゴルフクラブ 川野日出生 顧問)「何か所もやられて、非常に景観を台無しにされているところがありますので、本当に有効であることを期待して今回入れさせていただいた」

動物を捕獲したり殺したりする獣害対策がある一方で、辻教授が目指すのは、「人と動物それぞれが暮らす場所を明確にし分けること」です。

(岡山理科大学 辻維周教授)「人間と野生生物との間に距離をとれる、これで『動物の住む世界』と『人間の住む世界』というものの線引きが、できていけばいいなと思っています」

従来、動物が慣れてしまうため効果が薄いとされてきた「音」による対策。しかし、辻教授の研究は効き目を確認しながら、人の手でこまめに変化を加えるなど地道な作業を継続することで実績を上げていて、さまざまな場所での導入が進んでいます。