SDGsウィーク。5日は、難病のため、日常的にごはんを少ししか飲み込めない子どもたちがいます。そんな子どもたちを、あの「お菓子」で救おうと立ち上がった人がいます。
柊くん
「背中がかゆくなってきた」
お母さん
「背中がかゆくなってきたな」
かゆみがおさまるまで、およそ2時間。
お母さん
「左こっち?こっちやな」
皮膚を傷つけないように、手のひらでかき続けます。田邉柊くん(4)は、表皮水疱症という皮膚の難病を抱えています。少しの刺激で体に水疱ができたり、皮膚がはがれたりする難病で、全国に約2000人の患者がいるそうです。
母・光希さん(34)
「刺激があるとすぐに水疱がぶくぶくっとできてしまう。治ってもめくれ、治ってもめくれというのをずーっと繰り返しています」
体にできた水疱は針で潰し、保護剤を巻き直します。水疱ができると、強い痛みもあるといいます。
母・光希さん
「お風呂入る時はずっと泣いてます。痛くて」
根本的な治療法は、まだ見つかっていません。
Q.何が大変?
柊くん
「歩くのが大変。パパのところにいく。パパ~」
水疱ができるのは、体の表面だけではありません。
母・光希さん
「舌にできる時がありますね」
口の中を傷をつけないように、食事は柔らかいものが中心ですが…
「いただきまあす」
母・光希さん
「(食べる)量は本当に少なくて、2、3口で終わる時もありますし、固形物で栄養をとるということは、ほぼほぼできていないかなと感じます」
実は柊くん、明日、楽しみなことがあります。
柊くん
「明日楽しみ」
やってきたのは、北海道大学医学部の中村恒星さん(26)。
母・光希さん
「わあ!」
中村さんが取り出したのは、チョコレートです。実はこのチョコレート、表皮水疱症の患者のために、中村さんが開発したものなんです。
北海道大学医学部6年 中村恒星さん
「医学生の僕が何かできないかなということで、食べられる可能性を広げたものを作るっていうのは価値があるかなと思っていて」
このチョコレートは、油分が多く固まりにくいアーモンドなどを使って、口どけのなめらかさにこだわって作られています。さらに、きなこや昆布など、栄養豊富な8種類の食材を配合した「完全栄養食」でもあるんです。
中村さんから製作を依頼されたチョコレート職人の渡邊さんも…
チョコレート職人 渡邊圭介さん(25)
「病気の方々にチョコレートというものが手助けになるというのは、衝撃というか。思いはこもりますね、さらに」
4年前、患者会(表皮水疱症友の会 DebRA Japan)でのボランティア活動を通して表皮水疱症という難病を知った中村さん。食べると痛みを感じる患者さんにも効率よく栄養をとってもらいたいと、このチョコレートを開発したのです。名前は「世界一やさしいチョコレート」。
こうして、チョコレートが柊くんの元にも届きました。
お母さん
「おいしい?」
柊くん
「普通の味」
中村さん
「辛口だね~」
辛口の評価でしたが、すぐにもう一口。
母・光希さん
「すごい食べるやん柊くん」
柊くん
「おいしい」
中村さん
「やったー」
嬉しそうに食べる柊くん。
父・昂秀さん(35)
「めっちゃ楽しみにしてました、今日。『チョコレート、今日や』って、8時前から起きて」
Q.食べやすかった?
柊くん
「(うん)」
Q.どんな感じだった?
柊くん
「やわらかかった」
母・光希さん
「口の中で結構溶けやすいので、食べやすいです。普段あまり固形物を食べないので、チョコレートで、それも柊くんの好きなもので、栄養が摂れるなんてすごい最高やなと思いました」
このチョコレートは、柊くんと同じ表皮水疱症の子どもたちのほかにも、食べ物に悩みを抱える人などにこれまでに1万枚以上が届けられています。
北海道大学医学部6年 中村恒星さん
「少数だけど、大変な思いをしてる人たちに、フォーカスが当たるような社会にしたい。病気の人にとって(食べ物の)選択が多い社会をいろんな人と協力して作っていけたらと思っています」
柊くん
「バイバイ」
思いのこもったチョコレート。込められた優しさも、多くの人に届いています。
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