海岸に集まる無数の白い点の正体は全てカモメ。カモメの大群が青森県平内町にある浅所海岸は白鳥の飛来地として知られていて、10月中旬から3月下旬ころまでは700~800羽の白鳥を見ることができる。この場所になぜカモメが集まっているのか?

■2月中旬頃に現れたカモメの大群

「なんでこんなに多いのかな。こんなにいるのは大変だな」
カモメの大群を目にしたときに、そう思ったと話すのは小湊鳥獣保護区管理員として働く針生倖吉(はりう・ゆきよし)さん。

日本野鳥の会青森県支部顧問でもある針生さんがカモメの大群を発見したのは2月28日。週1回行っているという浅所海岸沿いの巡回中のことだった。この日は3000羽を超えるカモメを目にしたという針生さん。それから3日後の3月3日、針生さんが改めて数を数えてみるとユリカモメ約1000羽、カモメ約4000羽と計5000羽余りのカモメを確認した。小湊鳥獣保護区管理員として2012年からカモメの数を数えているが、今年が一番多いと感じたという。

■なぜカモメの大群が現れたのか?

5000羽余りのカモメを目にした針生さん。針生さんによると、カモメの大群が現れた理由は2つ考えられるといい、1つ目は横浜町や野辺地町でのイワシの大量漂流だだという。

青森県内では2023年2月16日以降、横浜町のほかむつ市、野辺地町にかけて、陸奥湾の東岸約50キロにわたってイワシが大量に漂着しているのが見つかっている。
これと同じ頃に針生さんは今回と同じ規模のカモメの大群を目撃しており、こうした理由から、今回の大群もイワシの大量漂流が原因なのではないかと指摘する。

また、針生さんは2つ目に考えられる理由として、北へ帰るカモメが浅所海岸で休息しているのではないかという。

カモメのなかには、ウミネコの繁殖地として全国的に知られる青森県八戸市の蕪島で繁殖したのち、冬になると一旦南下し北に帰る習性のものもいるのだという。そのため、北へ帰るための休息をとっているのではないかと考えたそうだ。

また、動物生態学と生態工学の専門家である弘前大学農学生命科学部の東信行(あずま・のぶゆき)教授に見解を伺ったところ、北へと渡っていたカモメたちが天候が悪かったため一時的に休みにきていたのではないかと東教授は話す。

北へと渡るカモメたちは太平洋側の海のうえを飛んでいく習性がある。そのカモメたちの移動中の天候が雪や風などで悪かったため、一時的にでも休める場所がないかと探したときに、イワシの大量漂流があり、餌場にもなりうる横浜町や野辺地町に近い平内町の浅所海岸に、ちょうど良く大群で押し寄せたのではないかという。

なかなか見ることのできないこの自然現象。針生さんによると、3月いっぱいであれば見られるのではないかということだ。